https://bookmeter.com/reviews/67822051
自分がメーカーで働いていると、色々な課題を解決して製品を実現させるプロセスを日常的に見ていて開発者はすごいなと思ってるけど、物理学者でも理論屋さんではなく実験屋さんになるとこれを前例がない最先端ギリギリでやってて、ああ、こういう人たちが世界にはいるんだよな、と途方もない気持ちになる。最先端の理論(仮説)の説明から、観測装置のノイズをいかに減らすかというエンジニアリングの話に行ったり、素粒子から宇宙に分野を鞍替えする意外だけど実は合理的な経緯や、組織運営やテーマ選定の戦略とか、振れ幅が大きくて本当に面白い。
素粒子から宇宙に専門を鞍替えするのは、ミクロな素粒子とマクロな宇宙、物理学と天文学、と距離が大きいように思えるけれど、理論面では素粒子が最もミクロな分野だけど宇宙も誕生の瞬間はミクロなので似てくるし、実験面では膨大なデータを重ねて統計的に解析する手法や、観測機器のノイズを低減するための冷却ノウハウが活用できるというので、実は合理的な判断だという。
それでも素粒子の研究団体が宇宙を研究テーマに据えるというのは、研究者の世界ではかなりインパクトの大きいことだったという。そうしたことを、激務の最中41歳で入院して暇なあいだに改めて考え直して決めたという。
地球にやってくる長波長の電磁波(マイクロ波)を観測することがどうして宇宙誕生の仮説の検証になるのか、という話も本当に面白かった。そもそも空間ってなんだとか、ビッグバンから光が直進できるようになるまで38万年のタイムラグがあったとか。
宇宙背景放射──「ビッグバン以前」の痕跡を探る (集英社新書)
- 作者: 羽澄昌史
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/10/16
- メディア: 新書
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