https://bookmeter.com/reviews/67822018
ジャニー喜多川は「アメリカのショーアップされたステージを日本でもやりたい」が戦後から現在まで70年間で変わらずコアにある。だからアイドルのあり方や楽曲の流行が変わっても歌とダンスはやめないし、年齢を重ねてもアイドルでい続けるし、アイドルという職業意識が求められるし、育成とセットになるからタレントの強い囲い込みになるし他事務所に対する独立性が高い、といったジャニーズの特徴が出てくる。ジャニー個人の内面的な価値観が事務所のコアそのものの属人的な形態なのだとしたら、亡くなると同時に失われるのだろうか。
どちらかというと組織や影響力が芸能界全体に対してどういう経緯で強くなってきたのか、みたいな話を読みたかったけれど、本書はむしろアイドル史の変遷を見るのがメインだった。
アイドルの形態の変遷とジャニーズの対照を見ていくのは面白かった。アイドルはアーティストと違って自我が邪魔になる、「こういう表現をしたい」というのが前面に出てきてしまうとそれはもうアイドルでいられなくなってしまう。ただそれはSMAPあたりからちょっと変わって幅が大きく広げられた。(SMAPがアイドルの余技ではなくて全力でコントに取り組んだことは、吉本のお笑い芸人が天然素材で本気でダンスに取り組んだことと裏表になっている。)
モーニング娘。がオーディションの過程から見せていったように、アイドルが「育っていく過程を応援する」ようになったし、AKB48でさらに未熟になるが、ジャニーズの場合はもともとの理念が「ショーアップされたハイレベルなステージを見せる」ことにあるから、(結果的に未熟さが売りの人が出たとしても基本的には)そういう見せ方をしないし、30代、40代になっても「アイドル卒業」ということがないという。
- 作者: 矢野利裕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/12/14
- メディア: 新書
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