やしお

ふつうの会社員の日記です。

桂歌丸『歌丸不死鳥ひとり語り』

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古典落語を演じるのは、単なるコピーではなく、噺を分解し、コアを取出し、現代の観客や自分自身の特性などの条件を基に、そのコアが最高の効果を発揮できるように再構築していく営みになっている。歌丸は、当初は新作中心だったが、40歳前後から古典の発掘や圓朝作品に没頭していく。6代目圓楽はそれを「新作と同じ」と言う。芸術家にクリエイターとアレンジャーの2種類がいても、土台は共通している。笑点の出演者なだけではない、花街に生まれ15で入門し、81で死ぬ直前まで「落語が大好き」とネタを増やし高座に上がり続けた噺家の本。


 歌丸は趣味の釣りで何度か死にかけつつも生き延びるエピソードがある。元首相の宮澤喜一回顧録で、ヤバい書類を抱えて窓から屋根伝いに脱出した話や、ホテルニューオータニでナイフを持った暴漢に襲われて格闘しつつ逃げ延びた話だったりを語っていたのをふいに思い出した。なんかそういうエピソードを見ると、機能としての人間ではなく、動物としての人間の生死を見るような気がして不思議な気持ちになる。もしそこで死んでいたらと思うと、不思議な感じ。