やしお

ふつうの会社員の日記です。

齊藤忠光『都道府県と市町村の成り立ち』

https://bookmeter.com/reviews/99194530
日本の地方行政区分を古代~現代まで時間軸に沿って概説する本。主に明治期の藩→県への編成の変遷や、市町村体制が形成されていく過程がメインで扱われている。なぜ全て県ではなく都道府県の4種類あるのかとか、「郡」って何なんだとか、そうした疑問も、歴史的な経緯を見ていくと「その時点では必要だったものが、必要性はなくなっても形や名前として残った」みたいなものもたくさんあることが分かる。単純な時間軸で並べるより、著者なりに大胆に整理してみせてほしかった。

中川淳一郎『電通と博報堂は何をしているのか』

https://bookmeter.com/reviews/98946499
広告代理店(特に電通)の、ブラック、中抜き、利権などのネガティブイメージが生じる構造が少しわかった。広告の仕事がもともと明確なゴールを持ちづらく「際限なく時間をかけられる」ため、長時間・大人数をかけがちで、ネットの登場でさらに過剰になる。人件費がかさむため外注や子会社にやらせて、社員の専門性が低下する。クリエイター優位の博報堂に対し営業優位の電通では、顧客要望に沿い過ぎるし、クライアントも「高いが面倒なく丸投げできる」と重宝し癒着していく。広告やPRに意義はあっても、業界構造が時代の変化に追従していない。

和田泰明『小池百合子 権力に憑かれた女』

https://bookmeter.com/reviews/98946483
炎上しそうな案件を見つける→問題を言い立てて炎上させる→正義・大義名分の側にポジション取りする、という一連の動きが小池都知事はめちゃくちゃ上手くて、そのサイクルを躊躇なく回せるので、ポピュリズムが成立して支持を受けるし、権力に近接できるし、長年に渡って「話題の人」であり続けられるんだろうか、と本書が紹介する色んな事例を見ながら思った。そのゲームの世界では、「課題を解決すること」自体には興味がない(意味がない)ので、「騒ぐだけ騒いで最後はやりっ放し」にならざるを得ない。


 本書はサブタイトルに「権力に憑かれた女」と、ちょっとセンセーショナル気味につけているけれど、中身では取材や公開情報に基づいて割と淡々と出来事を並べていて、人物に対する価値判断はそこまで下していないし、事例を綜合・一般化して人物を分析するようなこともされていない。
 一人の政治家の評伝としてはまだ全然不足していて、ただそれは著者の能力の問題ではなく、「現に権力者であり利害関係が発生している状態」では収集できる情報に制限があるので、小池百合子が完全に「過去の人」になったところで、改めてちゃんとまとめたものが出るといいなと思った。
 あとどれだけポピュリストだろうと、(国政もそうだけど)予算を成立させるためには議会の「人数」が必要になるので、そこは必至で泥臭くやらざるを得ない、というのも面白かった。