やしお

ふつうの会社員の日記です。

焼きそばが墓の下からよみがえる

 テレビで「焼きそばやうどんの麺が値上げする」というニュースをやっていた。それを見た瞬間、「自宅で焼きそばを焼く」という可能性を急に思い出した。焼きそばのことを忘れていた、というのがすごく変な感じがした。スーパーに行けば焼きそばパンは見かけるし、時々カップ焼きそばを食べたりする。だから「焼きそば」というものを忘れ去っているなんてことはあり得ない。でも、そのニュースで焼きそばの麺の袋を見た瞬間、「家で焼きそばを作ること」をすっかり忘れてた、と思ったのだった。
 子供の頃はよく自宅で母親が焼きそばを焼いていた。豚肉と野菜を炒めて麺を入れてソースかけて焼いただけの普通の焼きそば。特別好きだったわけでも、嫌いだったわけでもない。時々食卓に出てくる。
 17,8歳の頃に両親が離婚して、2年くらい母親と二人暮らしで、その後2年くらい父親と二人暮らしをした。(自分が住んでいるアパートはそのままで、親の方が入れ替わるという変な動きだった。)22歳の時に卒業・就職して会社の独身寮に入ったから家を出た。だからたぶん、母親が作る焼きそばを食べたのは20歳くらいが最後だったんじゃないかと思う。母親は2年前に死んだから食べることはもう二度とない。
 会社の寮を26歳で出て、初めて一人暮らしになって自炊を始めた。当初は色々やっていたから、焼きそばを作っていたような気もする。一方でカップ焼きそばというものを食べ始めたのもこの頃だった。なんかおいしくてびっくりして、食べる習慣ができた。子供の頃はカップ焼きそばは食卓に出なかったから食べたことがなかった。10代の間に一度たりとも食べたことがない、ということはない気もするけど記憶にない。カップ焼きそばはおいしいよね。


 自炊はだんだん雑になっていった。最近はほとんど野菜を炒めるか煮るかして食べているだけ。週に2, 3日やってた焼き魚もほとんどやらなくなってサバ缶になった。ムニエルとか作っていた頃が懐かしい。カレー・シチューももう4か月以上作ってない(そろそろ作りたい)。ご飯を小分けにして冷凍していたのも面倒くさくなって、ここ1年くらい餅を食べている。お餅って「正月に食べるもの」と漠然と思ってたけど、そんなのは思い込みで、年中食べればいいじゃん? と目からウロコが落ちたのがブレークスルーだった。
 「今夜は何食べようか」というのも、ほとんど決まってくる。考えるんだけど、無数にある色んな料理の可能性が最初からもう除外されている。だから、忘れちゃってたんだよ。ニュースで、マルチャンのあの焼きそば麺の袋を見た瞬間に、「その可能性があったね!!!」と急にひらめきみたいに来た。変なの。


 死んだ「丁寧な暮らし」の墓から、ゾンビのように焼きそばがよみがえってきた。


 それで買ってきて作ったらびしょびしょの焼きそばができた。たぶん具(野菜)が多すぎて水分が飛ばずに蒸し焼きみたいになったせいだと思う。でも、よく考えたら母親が作ってた焼きそばもびしょびしょだった気がする。「そうそう、自宅の焼きそばってこうだよね」と思った。
 そういえば今日は自分の誕生日だった。なんでこんな記事を書いているのだろうか。勝手に33歳になっている。