やしお

ふつうの会社員の日記です。

小山登美夫『現代アートビジネス』

https://bookmeter.com/reviews/110422959
この1冊で、美術のマーケットや現代美術がどういう考えで動いているのかが、かなりの部分理解できるかと思う。現代アートも、作品単体で見るとよく分からなくても、その美術史上の文脈を含めて見たときに価値が発生してくる。それに加えて、例えば奈良美智村上隆にしても、作品の物体としての強度や技術が実はかなり高いことが評価に繋がっているという指摘がなるほどと思った。実際に展覧会とかに行っても、物理的なサイズや質感から得られる情報が、写真を通して見る作品からは分からなかったりする。


著者は1978年に中学3年生のときに、西武百貨店ジャスパー・ジョーンズの回顧展のカタログを見たことで衝撃を受けて、現代アートにハマったことがきっかけでギャラリストとなったという。著者は奈良美智村上隆が世界的な評価を得るきっかけを作っていったことを考えると、西武百貨店や西武美術館(セゾン美術館)がそうした現代美術の紹介を積極的に行ったのは、堤清二の思いがあってのことで、そう考えると堤清二の文化的影響は広く大きかったんだろうなと改めて思う。