やしお

ふつうの会社員の日記です。

藤沢周平『隠し剣秋風抄』

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どうしてこう立ち回りのシーンでわくわくするのかなと考えてみると一つは、主人公をのっぴきならない、抜くより仕様のない状況に追い込む作業をきっちりこなしているからなんだろう。タイトルの秘剣がどこかで出てくることは分かっていて、そのためのお膳立てが着々と進むわくわく感。もちろん他にも例えば、時間処理が適切――描写を重ねれば時間は引き伸ばされてスピード感は失われることを的確に把握して適切に切り上げているとか、台詞の選び方がイカしてるとか、分解すればキリがない。このズレなさ、適切さは職人みたいだ。

 (仮にそう分けるなら)エンタメ系・大衆小説に対しての最大限の賛辞だけれど小説を読んで最も刺激的なのは、この「適切さ」、「きっちり」からズレてしまったりふいに過剰さが出てきてしまったり、小説のぎりぎりを見せられたときなのです。