やしお

ふつうの会社員の日記です。

神田裕行『日本料理の贅沢』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/7859868

読むだけでなんというおいしさ! 観察からくる現象(料理等)の描写と、考察に基づく現象の解説の具体性が「読むだけでおいしい」を支えている。ありがちな何の根拠もなく「日本料理はすごいんだどうだ!」と言う者共から彼が身を引き剥がしているのは、一つに彼が日本料理の外部(フランス料理だったり中国料理)を知っていてその異同から客観的に日本料理を語り得る、相対化できるところにある。

「観察から〜」が内包的、「外部」が外延的……


 「おいしい」を最大限実現するにはどうすれば良いのかをひたすら考える姿勢がかっこいいのよ。
 ただのゴマでさえおいしそう。

 胡麻は中火で手早く煎ろうとすると表面だけが焦げておいしくない。でも、じーっとゆっくり分厚い焙烙で煎るとプクッとふくれてきます。それは胡麻の中の水分が温められることによって、膨張するのです。膨張した瞬間に表面にちょっと油がにじんできます。この油が胡麻の表面で焦げるとなんともいえない胡麻の芳ばしい香りがするのです。常に混ぜながら気長に煎らなきゃいけない。火が入ってくるとパチーン、パチーンと飛びはぜてきます。それはプッとふくれる瞬間に飛ぶのだと思いますが、プッとふくれたらすぐに焦げるので、火を弱めてシューッと薄い焦げ目をつけて仕上げます。そうするといつまでも本当に芳ばしい胡麻の香りがします。
 焦がすものではなくて「自分の油で焦げる」という意味では焼き魚と同じです。

日本料理の贅沢 (講談社現代新書)

日本料理の贅沢 (講談社現代新書)