やしお

ふつうの会社員の日記です。

『最後の忠臣蔵』、『アンストッパブル』、『白いリボン』、『海炭市叙景』、『ゴダール・ソシアリスム』、『デュー・デート』、『しあわせの雨傘』

 1月に劇場で観た映画です。

1/2 杉田成道最後の忠臣蔵

 実家に帰省中、父が観たいというので。途中で父がぼろぼろ泣き出したので、あらーと思ってたら自分もぼろぼろ泣いていた。
 あんなに皆ゾロゾロついてきちゃって、あざといなーと思いつつ泣いちゃう。でもこれは感動しているというより、生理的な反応として泣いているだけです。単純に、不公平がゲット・イーブンされる際の快楽を味わっているだけです。

1/7 トニー・スコットアンストッパブル

 うひゃー。これはすごく楽しい。こんなにわくわくするなんて!
・冒頭で「実話に想を得た」(inspired by a true story)と書かれるわけですが、リドリー・スコットが『ロビン・フッド』で単に「これは実話」(true story)と書いてしまうことの差、この意識の差が如実に実作にあらわれてる、なんて言ってしまいたくなります。フィクションに対する自覚の差。(リドリー・スコットと比較する必然性は別にありませんが、兄弟だし公開がすごく近かったので、つい。)
・例えばテレビドラマを基準にすれば、映画だともっと長いショットでないと満足できない。やっぱり贅沢に時間を使ってほしい、と思ってしまうんですが本作(に限らずトニー・スコット映画)ではカットがものすごく短い(テレビドラマよりはるかに)。この積み重ね。こんなに気持ちが良いのは見せ方が抜群に適切なのね。どう適切なのか、もっとちゃんと観ないとダメね。
・何もかもが格好いいよ。音も、カメラの位置も、ショットの短さも、演出も。あと終わり方のサッパリ感。あ、こんな風に終われるのね、と感心した記憶(というかメモ)だけが残されていて、実際どんなだったか忘れちゃった……。DVDでも借りてこようかな。もっとよーくよーく見ればもっと色々分かるかもしれない。
・それにしても映画自体が短い。90分くらいできっちり作る、というのは近頃あまり見かけないので、それだけでもすごく貴重だ。

1/9 ミヒャエル・ハネケ白いリボン

 タイトルだけ見るとハートフルストーリーみたい。でも恐ろしい話。抑え付けられた子供たちの憎しみのかたち。
 やっぱりオナニー防止で寝る前に男の子をベッドに紐で縛り付ける、というのはよくない。好きにやらせてあげないといけないと思う。(ちなみに映画ではもちろん「オナニー防止」とは明言されず、罪を犯さないように、とされていますがあれは、絶対にそれよ。ひどいわ。)

1/10 熊切和嘉 『海炭市叙景

 あああ、これはすごく好きだ。今年1番だ。まだ1月だけど。こんなに丁寧に作ってあって、本当に涙が出るよ。
・冒頭の、造船所での船の進水式では、本当に船のこの大きさというのが素直に見れてそれだけでも満足。
・単純に、もう町の感じ、家の感じというのが本当によく出ていて、人がかすかな息苦しさを感じながら毎日の繰り返しの中で生きている、というのが目の前にあるという感動。
・それぞれいろんな人が生きていて、ほんの少しずつ人生が重なっている、というこの感じはちょっと青山真治の『エンターテインメント!』に似ているかもしれない。
・バスみたいな一両電車に偶然みんなが乗り合わせて、もちろん別に言葉を交わし合うわけでもなくただ乗り合わせて、踏み切りで最初の兄妹とすれ違う瞬間は、昨年のアントワーン・フークアの『クロッシング』よりはるかにクロッシング感があった。うわあー。
・最後におばあさんが、行方不明になっていたのがふいに戻ってきた猫を撫でる手のクロースアップがスローモーションになるときの切実さには胸をつかれる。恐らくあれがこの映画の中でのたった1回きりのスローモーションだったけれど、やっぱりスローモーションはたった1回くらいしか使ってはいけない(そうでなければ効果も何もない)とは思います。(『告白』くらいずーっとスローモーションだと途中でもういいか、と許してしまいそうになるけれど)

1/16 ジャン=リュック・ゴダールゴダール・ソシアリスム』

 これをどう楽しめばよいのかよく分からなかったというのは、今の自分には、きっとまだ何かいろいろ足りないんだ……
 とりあえずガソリンスタンドでアルパカが普通に紐でつながれて飼われていたのですごい。

1/29 トッド・フィリップス 『デュー・デート』

 コメディはやっぱり当人たちが切実に、必死で何かに対処している姿にしか立ち上がらないはずだという認識を改めて持つ。あのおデブの切なさったら! 父親の遺灰をコーヒー缶に入れて持ち歩いているのも、本人は本気なんだ。
 細かいところがきちんと活かされていく、その積み重ね。
 あとロバート・ダウニー・Jrがウザい子供の腹をなめらかに素早く殴る瞬間は本当に動きが気持ち良かった。

1/30 フランソワ・オゾンしあわせの雨傘

 正直に言うとこういう間のないコメディはあんまり好きじゃない。休符のない音楽、という比喩を思いついたけど適切かどうかは不明。
 あと、みんな基本的に「しあわせ」過ぎて落差が生じようが無いのであんまりコメディになりきれないような。ポテンシャルエネルギーがゼロ。
 とか言いつつ、ついつい笑ってしまう部分はたくさんありました。主人公のカトリーヌ・ドヌーヴが必要以上にビッチ設定だったりするところが。
 そしてハッピー・エンドというのはとてもありがたいね。何だかカトリーヌ・ドヌーヴが歌ったりしてて……。