やしお

ふつうの会社員の日記です。

ごしごし

 ここ数日に私の身に起こった奇跡体験アンビリバボーを、時系列で書いていこうと思います。
 世の中には同様の事例がいくつもあるのだろうな、とは想像できても、実際に自分の身に起こると呆然としてしまいます。


3/8 2:49, 2:49
 夜中に携帯電話に着信が二度、立て続けにありました。(以降、時間はそれぞれ着信を表します。)眠っていたため取れず、番号非通知のため折り返しもできませんでした。
 よほどの急用を、誰か番号を誤って私の携帯電話にかけてきたのか。それにしても留守番電話に何も残さないのはふしぎ。


3/8 7:27, 7:27, 7:28
 再度、非通知にて着信。通勤のため電車内におり、出られず。
 嫌がらせなのか、よく分かりません。


3/8 20:03, 20:04
 着信に気づかず、取れませんでした。非通知です。なお、この先も全て着信は非通知です。


3/8 21:57
 電話を取って「はい」と応えた瞬間に切られました。


 その後、しばらくかかってこなくなりました。
 ただの間違い電話かな、と思う一方で、適当な番号にかけてみたら有効な番号だった。女性かもしれないと期待して掛け続けたところ出たのは結局男だったので失望して電話を切った、という可能性も私は夢想してみました。


3/9 22:42
 自室のPCでジュリーの「勝手にしやがれ」を聞いていたところ、気分が良くなったので自分も歌いました。ふと自分の声が実際にどう聞こえているのかが気になって、携帯電話で録音して遊び始めました。25歳、社会人。
 その録音中に着信。あわてて出るとテレビ電話に切り替わりました。人生で初めてのテレビ電話です。
「相手にもこちらの映像を出すか」といったダイアログが画面に出たため「いいえ」を選択。
 画面には相手からの映像。男性の勃起した性器と、それをごしごしする手が映っています。ひたすら、無言で、ごしごししてる! すごい速さで、ブレて見えない! 一瞬で私の頭は真っ白になりました。
 だって、しかも、ものすごく立派なんです、それが! 私の見立てでは20cm弱。(私は自分の見立てに根拠の無い自信があります。)もしかすると体の小さい人で、相対的に大きく見えているのかもしれないけど、もう、長いんです、これは、すごく。


 呆然とした後、少しずつ思考が戻ってきて、とにかく携帯の通話口を塞ぎました。こちらの情報を与えてはならない、と危機感を抱いて。
 画面をよく見ると、ミッフィーちゃんが小首をかしげるアニメーションが下端に小さく映っています。どうやら、映像の代わりに相手に送られている画像のようです。たぶん携帯を買った時そのままの設定。
 一方が自分の陰茎(しかも立派)をごしごしする映像を送り、もう一方がミッフィーちゃんのかわいい映像を送る、これが、私の人生初めてのテレビ電話だなんて、ひどすぎる!


 いったいいつ終わるのかな、フィニッシュまでいくつもりかな、そうしたら相手はどう出てくるんだろう、顔を見せてくるのかな、話しかけてくるのかな、そうしたら、俺は、どう対応すればいいんだろう、といろいろ不安に思いながら、それでも切らずにぼんやり見ていると、いきなり相手から切られました。
 何分経ったのか覚えていません。十数分だったような気もしますし、2,3分だったような気もします。


3/9 22:49, 22:50, 22:50, 22:52, 22:53, 22:55
 あまりの出来事に、どうしても誰かに話して楽になりたくて友人に電話で報告していると、次々に着信が入ってきました。でも電話中のため取れず。
 ちょうどフィニッシュの場面だったのかもしれません。その後電話が来なくなったのは、たんにあきらめたか、ハイパー賢者タイム中だったかのどちらかだと思われます。


 もともと私の携帯電話は12秒間のコールで留守電に切り替わるように設定されていますが、常々短すぎて取れないと思っていたこともあり、この機会に30秒に変更しました。
 次に掛かってきたときにはもっと確実に取れるよう、また、先程の連続コールを取らなかったことで傷つけたかもしれない相手の心を癒すためです。
 もし相手が次に掛けた際に、仮に私が出られなくても、留守電に切り替わる時間が長くなっていることに気づいてもらえれば、あなたを受け入れる気があるよ、というアピールになるかなと思って。


3/10 0:29, 0:29
 すでに眠っていましたが枕元に置いていたために、飛び起きて二度目の着信で出ることができました。
 テレビ電話。先程の陰茎が、しっかり強度を保って、またごしごしされてる! お盛ん! しかもでかい! こちらもすみやかにミッフィーを提示。そのまま何もせず凝視。
 約2分半で向こうから切られました。今回もフィニッシュは無し。




 その後、自分の捨てメールアドレスを記載した画像を、ミッフィーちゃん画像と入れ替えました。きっともう一度かかってくると信じています。そして次のときは、これで相手には私のメールアドレスが知られるはず。いきなり話しかけたらたぶん、ごしごしさんはシャイだからすぐ切られてしまうと思う。それで、相手の好きなタイミングで、匿名性を保ったまま連絡が取れる方法を提供してあげるのです。


 ちなみに今、私がごしごしさんについて想定しているのは次の3つのケースです。
(1) 他人:誰か知らない人に自慢したい → 適当にかけたら番号が存在した → 女だと思ったら男が出た → 一晩考えたら男でもいいかと思った → ごしごし!
 まあ、最初から男でもよかった(あるいは男じゃなきゃ嫌だった)のかもしれません。シャイだから、いきなり話しかけられてびっくりして切っちゃったか、それとも私の生活リズムを忖度するためだったか。
(2) 知人:私に恨みか恋心かを抱いている知人が、非通知でごしごし!
 そういうのに興奮する気持ちはわからなくはありませんが、このアンフェアさ:相手は自分を知っていて自分は相手がわからないという非対称性はやや不愉快です。不愉快というより「こちらも対抗してごしごし!」という選択肢をとり得ないもどかしさ、とでも言えるかもしれません。変態の仲間入りですね。
(3) 霊:大きいのが自慢なのに誰にも見せることなく、褒められることもなく死んでしまった若者の霊が、こういう形で私の携帯に現れてごしごし!
 なんとか連絡をとって、成仏できる方法を二人で考えたいです。


 このような不慮の事態を、不快だ、と切り捨ててしまえばそれまでですが、私はこういった人生におけるノイズを育ててみたいと思っています。


 それにしても普段から適当なことばかり書いているせいでこれもウソだと思われるかもしれませんが、本当のことです。(狼少年みたい。)ぜひ応援してください。
 まずは、相手からの「次」がないことには、どうしようもない……