やしお

ふつうの会社員の日記です。

W・フルトヴェングラー『音楽を語る』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/15351857

「現今の音楽家は、《素材面の征服》にふけり、いわばそれだけを自分の目的とし(略)その結果、必然的に、感情に即した全体の関連を、多少ともあきらめてしまうことになる」(p.40)と「素材だけじゃダメ」を本書全体で語る。音楽よりは馴染み深い小説につい引き寄せて考えると、最初にメロディ=ストーリーを楽しむ段階、次に素材=語り口・テーマ等々を個々に楽しむ段階、その先に全てを統合した「全体」と呼ぶ外ない何かを見る段階があって、第2段階止まりではダメということかも。でもこの理解も音楽を離れてしまってさして意味はない。


ベートーヴェンの先輩と後輩、そしてなかでもベートーヴェン自身が、彼らの作品を通じて、《演奏会聴衆》という概念をはじめて本当に作ったのです。」(p.22)
「技巧は、個性全体とは分離したものとなって、目標をきめて訓練すればつねに到達できるものとなり、それ以来はじめて、個性に関連した再現一般の問題がおこったのです。」(p.47)
等々、何か問題なり現象なりを所与のものとして存在していると見なさず、その起源を忘却しないでおくという意識。

音楽を語る (河出文庫)

音楽を語る (河出文庫)