やしお

ふつうの会社員の日記です。

忘却

 子供のころからそうだったので、ベッドの上には布団を敷くものだと思い込んでた。
 それが半年ほど前、マットレスの上にベッドパッドを載せ、そこにシーツをかけるのが正しいあり方だと知った。引越しでベッドを買うにあたってベッドのことを調べていたら(べつに古文書とかじゃなくて、ネットで)、ふいに、ベッドのハイアマチュアみたいな人がそう言っているのを目にして知った。


 だいたい考えてみたら、それまでだってホテルや人の部屋で見たことがあるはずなんだけど、人は気にしないものは見ていない。


 先日母親にそのことを言うと、
「そうだよ?(いまさら何いってんのあんた?)」みたいに言われて腹が立ったので
「じゃあどうして布団を敷いてきたんだ」となじると、
「だって布団があったから」という。
 登山家である。"Because it is there."である。


 しかしこれは嘘なんだ。だってベッドがあるのに布団を買い足したりしていたのだから。
 エベレストは人類の意向とは無関係にそこにあっても、布団は自動的にあるわけではない。そこには人類の意向があるのである。しかしそういった起源を無意識に忘れ去って、平気な顔をして「だって布団があったから」などという。この精神、当たり前のように起源を忘れ去る心が、ベッドの上に布団を敷かせているんだ、と思った。