やしお

ふつうの会社員の日記です。

池上彰、佐藤優『新・戦争論』

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「実は似ている」という見方はある現象の性格や今後の展開を考えるにはとても重要だが、ここではそうした指摘が豊富だ。例えば「韓国人がアメリカで慰安婦像を建てている」という事態も、これは祖国を離れて久しい人々や既に2世・3世である人々が、自身のアイデンティティのありかを「心の祖国」に見出そうとする遠隔地ナショナリズムという現象の一種であって、かつてアメリカのアイルランド系住民がIRAを支援したり、カナダのウクライナ系住民がウクライナ民族運動へカンパした現象と同種だという視点を持てばまた対応も自ずと異なってくる。

 あと例えば、キリスト教と結び付いた太平天国の乱のトラウマもあって、中国は国家の外側にある宗教に対する忌避感を持っている、という基本認識から見ると、外側にいるダライ・ラマによるチベット仏教は拒否するが国内に(変質して)根付かせたパンチェン・ラマによるチベット仏教は許容するという構造も、バチカンによるカトリックは拒否するが国内の天主教愛国会によるカトリックは許容する、というのと同じだとか。