やしお

ふつうの会社員の日記です。

海道龍一朗『真剣』

https://bookmeter.com/reviews/102753592
上泉信綱という人物が題材のビルドゥングスロマン。相反する要素が対立からアウフヘーベンへ至る、という構造が幾重にも配置される。剛(神道流)と柔(陰流)の融合・再構築で新陰流が生まれ、マネージャー(武将)とプレイヤー(兵法者)の葛藤が極大化した末に統合されていく。ラストは刀(新陰流・信綱)と槍(宝蔵院流・胤栄)の立合いに至るが、この中で王道(右構え)と邪道(左構え)という信綱の少年時代の対立が究極的に融合した形で現れ、決した後に「人を殺す術が殺さない術に到達する」という認識が表白される。徹底している。