やしお

ふつうの会社員の日記です。

うどん店員とハンコック

 うどん屋でひとり夕食を済ませてのんびりしているところへ、若い女の店員が
「空いたお皿をお下げしてもよろしいでしょうか」
と通りかかった。
(そこに丼鉢はあれども皿などないのだが、もちろんそんなことを指摘せず)別に断る理由もないので了承すると
「少々おまちください」
と店員は奥へ引き込んだ。
 手に持った茶のポットが邪魔になって置きに帰ったものと理解した。
 しばらくして、すべからくこちらへ戻ってきた店員は改めて
「空いたお皿をお下げしてもよろしいでしょうか」
と私に問うた。
 えぇー。なんで二度も聞くの。
「……ええ、お願いします」
「はい。お下げします」
「……」
「失礼いたしました」
「はい」
「では、失礼します」
 しつこい!

 そのぎごちない様に思わず(どちらかというと好意的な)笑いを禁じ得なかった。

 それから見た映画『ハンコック』にこんなシーンがあった。
 乱暴者の超人・ハンコックが心を入れ替え、まともな、常識的なヒーローとして活躍しようとする。その初事件で、銃撃戦の真っ只中に取り残された負傷した女性警官を助けようとする。
「俺はあんたを助けに来た」
「ええ」
「体に触れてもいいか」
「ええ」
「今は特殊な状況で、あんたを助けるためにはあんたを抱き上げなけりゃならないからで、別に下心があるってわけじゃ……」
「いいから早く助けてよ!」

 この同じ日に体験された、二つの笑いを誘うシーンの異同はしかし、私の上に何事をも意味しない。