やしお

ふつうの会社員の日記です。

みんなの出会いがキセキだょ? ずっとずーっと、いっしょだょ?

 混雑した道を歩いていると(あ、肩がぶつかる)と思った瞬間に相手がすり抜けていくときがある。漫画の「黒子のバスケ」で黒子氏の技にバニシングドライブというものがある。相手にとってあたかも黒子氏がすり抜けたように見えるドリブル技である。これがそれだと思われる。


 やや高い位置から道を眺めていたとき、対向したサラリーマン同士がすれ違う瞬間にお互い右肩を素早く引き、すれ違い後に素早く戻すのを見た。武道の型のようで美しかった。見知らぬ相手同士が言葉も交わさずに、最適なタイミングで最小の動作で回避する。忍者だと思った。


 それから対向者の進路が重なりお見合い状態になることがある。今朝サラリーマン同士が正面で向き合って停止、しばらく微動だにせずややあってからお互い右にずれて歩き去ってゆくのを見た。
 「黒子のバスケ」で青峰氏と火神氏が相対し、互いに相手の動きを脳内でシミュレートし合って実際の動作に移る前に勝負が決するという場面がある。外見はただじっと向かい合っているだけのようだという。それが起きている。「黒子のバスケ」はバスケとは無縁の荒唐無稽なバトル漫画と目されているが、それは日常的に現実の中に存在する。みんなひとりひとりがキセキの世代だょ?


 しかしおばあちゃんたちがGメン'75のように歩いてくるとき、われわれキセキの世代は無力である。



 追い抜くことも避けることも許されない。
 逆算すると、おばあちゃん5人のチームを高校バスケに投入すればキセキの世代など他愛なく全滅である。
 でゃははは笑いながらコートいっぱいにゆっくり歩いてくる。シュートを放つもボールの重みに耐えきれず折れるおばあちゃんの指。怒り狂うおばあちゃん達。なんであたしら年寄りにボール投げさせる!? あんたたちが投げなさいよ若いんだから。どこの高校生!? 学校に電話するからぜったい……。
 オウンゴールを強要されるキセキの世代。ひたすらスリーポイントを入れ続ける緑間氏。30……120……210……対0でババ高生の勝ち。トーナメントを駆け上がってゆく。インターハイの頂点へ、そして昇天へ。
 少子高齢化社会のあり得べき悲劇である。