やしお

ふつうの会社員の日記です。

谷崎潤一郎『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/12542903

「少年」や「幇間」では衣装なり舞台なりの描写を重ねて豪華なのに、その後ではむしろ、美しいものを美しいと言って済ませるような説明的なスタイルに行くのはきっと、前者は長編に発展させて、短編はいつもと違うことをしよう、ということかも。「少年」と「魔術師」はどちらもこちら側と向こう側の世界の対比が描かれるけど、「魔術師」では不可逆的なこちら→向こうの遷移がたった一度生じる一方、「少年」ではこちらと向こうを往復する上、最後に向こうが夜の闇に包まれることで舞台と子供たちの関係性が変容するダイナミックさに満ちて好きよ。

谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)

谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)