やしお

ふつうの会社員の日記です。

1月にTV/DVDで見た映画

 ネタバレを気にせず書いています。

1/3 藤森雅也『劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』(TV)

 感想文は
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に書きました。前半の不穏さは一体なんだろう。どこからやってくるのだろう。例えば戦争を描く『ガンダムAGE』とは徹底的に無縁であって、けれど本作に漂うのは何故だろう、と疑問に思ったところからあれこれ考えてみました。

1/4 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー『恐怖の報酬』(DVD)

 淀川長治が本作について、ルイジがマリオをお稚児さんみたいに可愛がっていたのにジョーが現れてマリオを取ってしまったものだから嫉妬している、と語っていたのを思い出しながら見ました。そうして見るとルイジとジョーの対決に負けてとぼとぼ帰るルイジがいっそう寂しいですね。
 あと単純に何かをどこかへ車で運ぶという設定自体がもう面白かったです。もちろんそれを面白くする仕掛けがいっぱいあるのは分かっていますが、黒沢清が『ドッペルゲンガー』でやりたかったと言うのがよく分かるような面白さでした。
 ところで、え、なんで、と思うところはいくつかあって、例えば変な先住民の男女三人の後ろ姿を映すカットや、マリオがジョーを探しに崖を飛び降りる→着地の一瞬のスローモーションのカット。これはいったい何なのかしら。ちょっとやってみたかったのかな。

1/7 伊藤俊也『女囚701号 さそり』(DVD)

 え、これ、なに、これ、なにこれ。
 つい笑っちゃう。たとえば冒頭の刑務所長の表彰シーン。突然刑務所にサイレンが鳴り響いて、所長がキッと振り返りつつあさってを睨み付ける瞬間、もう吹き出してしまう! その後の梶芽衣子が走って逃げてるところも、うおー! どんどんやれー! という感じでむっちゃ面白い。なんか味噌汁かけたり、穴ほったりしててすごい。もう何をいってるのかよくわからない。
 シリーズを全部見たいんだけど近所のTSUTAYAにはこれしかおいてない。

1/8 ルキノ・ヴィスコンティ『ベニスに死す』(DVD)

 『マーラー交響曲』という新書を読んで、あ、そういえば見てないと思って。


 現在のシーンと過去のシーンが(説明臭くなく)交互に現れて進むわけですがたった一カ所だけ未来が交じるところがあって、ホテルで主人公グスタフが死にかけている未来のシーン。たった一カ所だけ未来を入れるワケって何だろうと思いました。
 陽光にきらめく少年の美に憧れ尽くして病の中で意識を失う(そして運ばれていく)ラストシーンの、時系列で言えばさらに後に位置するシーンなわけですが、これをそのまま時系列に配置するとラストシーンがかっこよくないというのが一つの理由。ではそもそもホテルで死にかけているシーンを省けば良さそうなところ、そうできないのは顔の対比をどうしても見せたいという欲望があるから。
 ペストに病み果て、したこともなかっただろう化粧が醜く崩れた、ほとんどジョークのような未来の顔と、とても身奇麗に整った現在の顔。
 一方、あり得なかった未来というのも存在してる。ペストの危険を夫人に知らせ、少年の髪に手を触れるところ。これはグスタフが床屋にいるシーンの間に挟まっているので、ああ、「あり得なかった未来」なのね、と分かって悲しい。
 「現在」は時系列的に並べる、「過去」や「未来」は「現在」に対して因果律的に過去/未来だと示して、必ずしも時系列に沿う必要はなく、「妄想」は作中人物の顔でサンドイッチ、というやり方で示すのね、と当たり前といえば当たり前のやり方のことをいまさらながら考えてみました。


 あとやたらゆっくりズームインするのはなんなんだろう。

1/14 アルフレッド・ヒッチコック『汚名』(DVD)

 見終わった後で蓮實重彦の『映画への不実なる誘い 国籍・演出・歴史』の中で『汚名』の演出についてあれこれ書いてあったなあと思い出して見返してみました。
 階段を撮ることが映画にとってもともと技術的にいかに難しく、そしてサイレントから撮り続けたヒッチコックがいかに階段を撮るためのカメラの位置を心得ていたか、さらに『汚名』でいかに階段を演出したか……といったことが具体的に書いてあって楽しかったです。