やしお

ふつうの会社員の日記です。

とびだせ光るマツ花粉

 仕事で、かすかな必要をかんじて、松花粉を封入したプレパラートをコンフォーカル顕微鏡で薄いスライス像にして取得、解析ソフトで3次元構築したんだ。何を言っているかさっぱりかもしれないけど、とにかく松の花粉の3次元の画像をつくったってこと。


 で、報告書のその画像を載せた項のタイトルを「松花粉3D」にしてて、なんかちょっと前の映画のタイトルみたーい! と一人でうれしいの。まだお上に提出してないけど、つっこんでくれないかなあとおもってる。つっこんでくれない場合は
「これって映画のタイトルみたいじゃないですか!?」
って自分で言うつもり。


 松の花粉っておもしろいんだよ。
 形がまずおもしろい。テディベアの生首みたいなフォルムなんだ。耳の部分はふくろで、表面がでこぼこしてる。風媒花なので、風に乗りやすいようにふくろがついてる。


 それから自家蛍光がおもしろい。
 蛍光ってのは、物体が外部から受け取ったエネルギーのうちのいくらかをつかって発光する現象のことで、顕微鏡の蛍光観察では標本に短波長の(エネルギーの高い)光を照射し、標本が発する長波長の(エネルギーの低い)光を観察するんだ。コンフォーカル顕微鏡も蛍光観察の一種で、標本にあてる光はレーザーを利用してる。
 ふつうは細胞やらなにやらの見たいものを、蛍光を発する物質で染めたり(染色)、染色すると死んでしまうので生きたまま観察したい場合は蛍光を発するタンパク質を導入・発現させたり(4年前にノーベル賞をとった下村せんせいのクラゲの話はこれ)して、観察できる状態にしてる。
 でもものによっては染めたり何だりしなくても、最初から自分で(可視光の)蛍光をだすやつがいる(自家蛍光)。


 っていう説明をなんでしてるんだろうね。タモリの話だったらこんな説明しなくてもわかってくれるのに、今日はタモリの話じゃないから説明しないとわかってもらえないんだ。


 それで松の花粉なんだけど、自家蛍光をもってるから染めなくても光ってくれる。しかも2色で光るの。外側はオレンジ色で、本体の内部(テディベアでいう脳みそ)は緑色で光る。真っ黒の背景で鮮やかに光るからかっこいいんだ。(なお、テディベアに脳は無い。)
 たまたま装置についてる488nmと543nmのレーザーで叩いてるんだけど、実際のところ何色(何nm)で光ってるのかは測ったことがないから知らない。でも測るのは手間じゃないのでそのうちやってみようかなと思うけどそれは仕事とぜんぜんかんけいない。
 そしてその情報は、世の中の何の役にもたたない。花粉を多色で蛍光観察する必要が、世の中にはたぶんないからだ。
 3Dで光る松の花粉のことなんて、みんなどうでもいいんだ。かなしいね。