やしお

ふつうの会社員の日記です。

親の所得と子供の学力の関係

 「親の所得と子供の学力に相関がある」みたいな統計が紹介されると、その後にたいがい「子供の教育費に差があるからだ」という説明がついてくる。ほんとにそうかなあって感じ。
 いや、所得の差が子供の最終学歴の差になって現われてくる(ひいては子供の将来の所得差につながって連鎖していく)って話はわかる。でも、塾に通えないから学力の差が出てくる、みたいな話はほんとかなあ。実感としてはもっと強いファクターがあるんじゃないかなと思ってる。
 親の思想が、所得にも子供の学力にも大きく影響してるんじゃないか。ものの考え方、勉強のやり方、努力の楽しみ方、認識の仕方、そういった思想。


 例えば「どんだけ頑張ったって生まれつき頭がよくなきゃ無駄」と思ってる人がいたとする。それだとまああんまり頑張ろうって気にならないわけで、進歩の幅がどうしても狭まって、給料のいい職業につくのは難しいかもしんない。(なお悪いことに、そういう状態の自分を肯定=防衛するためにそうした思想は大人になってさらに強固になったりする。自分が悪い訳じゃないんだ、という理屈で自分を守らなきゃいけないし、他人がそれを否定したら強く反発したりする。)
 そうした思想がその子供にも伝えられるのなら、やっぱり学力は伸びづらくなりそう。
 一方で「生得的な頭のよさよりも、ひとつひとつ頑張って進んでいく方が結局大きい」とか「生得的に才能のある人には結局勝てなくても、そんな相対的な勝ち負けじゃなくて、自分がどれだけ進めたかを楽しめればいい」とかいう考え方の親がいるとする。そういうスタンスでやってきてそれなりの進み方をしていれば、前者の親よりも高い能力の位置にまで到達して、それなりにいい賃金の職業についてそうだ。それにそうした考え方を親から受けた子供なら、それなりに勉強も楽しんでやりそうで、学力も高い傾向にあるんじゃないか。


 そうした思想の伝搬がけっこう効いてるんじゃないかと(たいした根拠もなく)思ってるんだ。そういう思想の差が、所得とも学力とも相関してるんじゃないかしら。
 AとBに相関があるからって、AがBの原因になってることをただちに意味する訳ではもちろんないしね。AもBも、何か別のCの結果になってるから、相関が見られるだけかもしれない。


 塾に通ってることと子供の学力に相関がある、っていう結果も出てるけど、それこそ、思想→所得→塾っていう影響ルートと、思想→学力っていう影響ルートがあるんなら、そりゃ塾と学力にも相関があってもふしぎじゃないよね。その相関を元手に、塾に通ってる「から」子供の学力が高い、と原因-結果の関係にすぐ持ち込むのは乱暴だよ。


 あ、それでお金がないとますます、塾なり大学なりに通う機会が奪われる=別の思想に出会う機会が少なくなる=親の思想を保持したままになる、って感じなのかもね。A(親の所得)とB(子供の学力)はC(親の思想)に影響されて相関を持つが、さらにB(子供の学力)はA(親の所得)に影響されて相関が強化される。Aを媒介にしてBの差がさらに拡大する。


 この「親の所得と子供の学力に相関がある」という話から、いつも「政府による再分配をちゃんとして教育費の格差をなくす」という話が短絡的に導かれる。
 再分配したところで親-子の思想の伝搬を解消する訳ではないから、「親の所得と子供の学力に相関がある」状態が完全に解消されるとは思えない。
 思えないけど、さっき見た2段階目のブースト(Aを媒介にしたBの再拡大)は防げるんだから、そりゃやった方がいいよね、ってことか。なるほど。


 ちなみに日本はなぜか、所得格差を解消するための再分配をすると、所得の差がさらに拡大するという謎のシステムなので、言ってみれば政府による3段階目のブーストが用意されてるわけだね。えげつねえ。