やしお

ふつうの会社員の日記です。

「ガンダムビルドファイターズ」と「おもちゃはうす ちびっこ」のこと

 「おもちゃはうす ちびっこ」がとつぜん夢に出てきた。そのおもちゃ屋のことなんてずっと忘れてたのに、たぶん昨日、10月スタートのアニメ「ガンダムビルドファイターズ」の1話と2話をまとめて見たからだ。


 「おもちゃはうす ちびっこ」はぼくが子供の頃、94年から00年あたりまでよく行っていたおもちゃ屋だった。コンビニくらいの大きさで、岐阜市内のやや住宅地に近い道路沿いにあった。
 店を入ってすぐにブラウン管3台でスーファミのデモ映像を流してるゲーム売り場があって、店の真ん中あたりはガンプラ中心にプラモの箱がたくさん積んであった。手前にはミニ四駆の本体やパーツ、奥は手品の道具やジグソーパズルと、それから小さい子むけのフラフープや人形も少し置いてあった。店の表にはガシャポンやカードダスが数台と、ミニ四駆のサーキットが設置されていた。
 40代くらいの太った大柄のおじさんと、小柄なおばさんの夫婦がやっていたお店だった。たぶんどの地方にもあった、町のふつうのおもちゃ屋


 これはもうひたすら個人的な記憶なんだけど、小4のときミニ四駆がとても流行していて、はまってた友だちに「ちびっこ」に連れていってもらったのがはじめてだった。ぼくも人並み程度にミニ四駆にははまって、ボールベアリングとか変なポールとか金色の電池とかを買ったりしたけど、もともと速度やタイムへの意識は低い方だったのでわりと早く飽きた。
 それ以前からガンプラは好きで、ミニ四駆終了後もガンプラを買いに「ちびっこ」には通っていた。それまでBB戦士とかだったのが、Gガンダムから1/144を買いはじめて、Wガンダムを経てガンダムXまで熱心に買って作ってた。友だちと行ったり、一人で行ったり、父親に連れてきてもらったりしていた。(店の前に3台だけある駐車場に父が車をとめてそこから降りると、どうしても他の子たちが見てくるのでけっこう恥ずかしかった。)
 だけど、∀ガンダムはアニメも見なくなってプラモも買わなくなって「ちびっこ」には行かなくなった。ちょうど中学卒業くらいだった。


 昨日見た「ガンダムビルドファイターズ」は、作ったガンプラを仮想空間で戦わせるゲームが主題のアニメだった。主人公は町の模型屋の息子。
 お店に積まれたガンプラや、第1話で主人公が得意げに見せたウィングガンダムのパッケージとプラモ、お店のおばさんと子供がふつうに楽しそうに会話しているところなんかがたぶん、「ちびっこ」のことをとつぜん夢に見させたんだと思う。それからガンプラを戦わせる装置が店の中に設置してあって、ミニ四駆のサーキットみたいなもんだなと思った。
 何より、改造してオリジナルのガンプラにして遊ぶという設定が懐かしかった。自分のときはアニメみたいに小奇麗じゃなくて、単に他のガンプラから寄せ集めてきてくっつけたりしただけだったり、ガンダムマーカー(ペン型の塗料)で塗っただけの、かっこ悪いやつだったけど。
 ただ不思議なのは、アニメを見ている間やそのあとも、ただ(ガンプラなつかしい。1/144のデスサイズとか6体くらい持ってたな)とガンプラに関する思い出だけがわいてきて、「ちびっこ」のことは全く思い出さなかったのに、夢に出てきてようやく思い出したことだった。


 最後に「ちびっこ」に行ったのは04、5年くらい。急にルービックキューブがほしくなって買いにいった。その頃はもうアマゾンか楽天でそういう物は買っちゃう習慣になってたけど、とにかく今すぐほしくて、郊外のトイザラスに行くのもまどろっこしくて久々に「ちびっこ」に行ったんだった。
 父親じゃなく自分が車を運転して行くなんて、とてもふしぎな感じがした。
 店構えは何も変わっていないしとても懐かしかったけれど、テレビゲームはデモ用のモニターも消えてたし取り扱いもやめてしまっていたようで少しさみしい感じがした。でもお客さんは結構いて、特に店の奥にあったカードゲームのテーブルは小学生から大学生くらいまでいっぱいだった。ガンプラの箱はいっぱい積んであった。


 毎日通学するのに店の前の道を通ってたんだけど、いつからかずっと閉まってるようになった。07年に閉店してしまった。
 しょうがないよなと思った。自分だってトイザラスとかアマゾンとかで買ってるのに、閉店が残念なんて身勝手なこととても言えないなと思った。
 もうこの辺にはこういうおもちゃ屋はないけど子供たちどうするんだろとも少し思ったけど、子供はいつだって与えられた環境で最大限かってに楽しんでるんだから、たんに自分と経験を共有できなくなったってだけで別に彼らは不幸なわけでもない。
 あとはただ、店のおじさんやおばさんどうしてるのかなとは考えるけど、わかりっこないし他人が余計なお世話という感じもする。


 今はもう父親も死んでしまったし、母親とは行ったことがないし、一緒に行ってた友だちとはもう付き合いがないし、「ちびっこ」ってああだったねこうだったねと懐かしむ相手もいない。それでせめて、こんなところにでも書いておけば、当時を知ってる誰かがひょんなことで見てくれて、懐かしがってくれるかもしれないと思って。


 そうした極めて私的な記憶を、夢見というかたちでいきなり呼び覚ましてきたのが「ガンダムビルドファイターズ」だった。
 一応付け加えておくと、この個人的な感傷とは無関係にとてもすてきなアニメだよ。ガンプラを買わせようという魂胆まるだしのアニメだったとしても構わない。絵はきれいだし、戦闘の動きもかっこいいし、キャラクターは生き生きしてるし、ギャグもちゃんと(?)あるし、見ていて楽しいアニメでこれからをとても期待してる。


 その夢で午前4時に目が覚めて、寝つけずにしばらくベッドの中で「ちびっこ」のことを思い返してた。
 そんな次第で3連休明け、会社でひどい眠気にさいなまれた一日だった。