20年弱ぶりに買って読んだ。当時はボンボン派でコロコロは年に1回買うかどうかという程度だったし当時との正確な比較はできないが、以下思った点。
主人公の少年が全裸になるシーンがたった1箇所しかなかった。その1箇所も局部は隠されている。自分が子供だった20年ほど前は、ギャグの場面でちんちん丸出しが定番だった記憶があるが、今は規制されているのか自粛しているのかまるで見当たらない。少女キャラのお色気シーンも、グロ描写もない。
昔よりページ数が多くなっているような気がした。しかし95年の連載本数をあらためて確認してみたら20数本で現在と変わりなかった。記憶違いで実際ページ数も変わっていないのか、1本あたりのページ数が増えているのかはよくわからない。
ただ玩具とのタイアップ作品は増えている。95年は5本程度だったのが今号は9本だった(マリオやカービィ、ポケモンの、長期連載で元作品とほぼ切れているギャグ漫画は除く)。玩具と言ってもミニ四駆やベイブレード、ビーダマン、ガンダムのような実体のある玩具(?)はなく、カードゲームとテレビゲームばかりだったが、それはたまたま今やっていないだけで、タイミングの問題かもしれない。
タイアップがカードゲームばかりのせいか付録に5作品分のカードがついてきた。デュエルマスターズ、バディファイト、オレカバトル、妖怪ウォッチ、パズドラZのカード。この歳になってもキラキラするカードを見ていると嬉しくなるのは意外だった。大人になって普段の生活で全面ホログラムのカードを目にする機会もないので、目に新鮮なのかもしれない。見ていると当時のわくわく感がよみがえってくる。
それから放送済みのアニメ7話分が収録されたDVDも付録についていて今風だなと思った。
扉絵以外でマンガのカラーページがない。玩具やゲームの情報にカラーページを費やしているようだった。
まとまった読者ページがない。読者がイラストや文章を投稿して編集がコメントをつけるまとまったコーナーがなく、各マンガの後ろについていたり、後は大喜利のコーナーが少しある程度だった。
調べてみたら「コロコロファンクラブ」という創刊以来の読者コーナーが01年に終了し、その後いくつかの読者コーナーが新設・終了を繰り返して徐々に縮小していき、今の大喜利コーナーが小さくあるだけになっているようだ。
ハガキでの投稿はもう集めにくいのかもしれない。ハガキを雑誌に出さなくても、自己表現やコミュニティでの地位向上(とそこから得られる満足感)はインターネットで事足りるからなのか。今回、コロコロを買って一番楽しみにしていたのが読者コーナーで、今の小学生たちがどんな感じか少しは触れられるかもと期待していたけれど、むしろインターネットでそういうコミュニティに潜り込まないとわからないのかもしれない。
一話完結でないストーリー物のマンガでも、一話の中で盛り上がる場面を必ず入れている。これはどれも徹底されていた。またギャグマンガではないバトル物でもギャグ要素を必ず入れている。
つい先日読んだ石ノ森章太郎の『マンガ家入門』の中でまさに、連載の場合読者が飽きないよう一話の中でも確実に盛り上げて、最後に次への期待を持たせるのは忘れるな、シリアスなマンガこそギャグを入れるべきでその落差を作らなければだめだ、という話が書かれていて、この基本から全く逸脱することなく忠実なのだなと思った。
今号の中では「ヒーローバンク」が一番その点で面白かった。敵の正体が実は主人公の尊敬していた人だったという(王道といえばそれまでの)展開だが、その人が悪に転向する経緯をとつぜん4コマ漫画で説明してコミカルに処理していた。最もシリアスな場面で落差を生み出してリズムをつくっていくそのあり方が先鋭だった。
ちなみにこの「ヒーローバンク」が今月号で唯一、主人公が全裸になるマンガである。
「スーパーマリオくん」が未だに連載されていて、しかも今でも面白かったのでびっくりした。
子供向けのギャグはアクが強すぎてもう自分には耐えられないと思っていた。実際ほかのギャグマンガ、「妖怪ウォッチ」、「でんぢゃらすじーさん」、「ケシカスくん」、「ふなっしー」、「ポケットモンスター」、「ペンギンの問題」は、面白いなと思うボケがあっても読み進めるのがどうしてもしんどい。ところが「スーパーマリオくん」はしんどさもなく楽しく読み進められる。
どこに差があるのだろうと思って気づいたのが、ツッコミの派手さの差だった。
他のギャグマンガはツッコミ役は、顔が崩壊したり、眼球が飛び出たり、ボケた相手を殴ったり蹴ったり、ツッコミのセリフが太文字やフキダシの枠線の太さで強調されたりして、派手につっこむのだ。一方で「スーパーマリオくん」は、相手を指さして笑顔で汗をかいてつっこむ程度だし、そもそもツッコミのセリフを言わずにギャグを無理なくつなげて進めていることも多い。
「今のはボケですよ! おかしいですね!」とことさらに言われれば興ざめるけれど、それを上手く回避しているようだった。
それから全体のお話の点でも優れている。ルイージの顔にクリボーのハリボテが被って取れなくなる→ルイージがクリボー界の一員になる→クリボー界でのし上がる(クリボスになる)→マリオと戦って負ける、という流れで話が大きくなって落ちる。個々のギャグとは別に全体でも落ちるのだ。しかも登場人物が話を大きくするのではなく、ただ勝手に構造的に大きくなっていく。無理やりという感じもなく極めて自然な流れで大きくなっていく。
他のギャグマンガは一テーマの中でギャグが盛り込まれていく点で同じでも、その一テーマ自体が全体の流れで広がって落ちるというのは見られなかった。
どれだけギャグでガチャガチャしていても、上の二点のおかげで安定してまとまりがあるという印象だった。
ちなみにルイージがクリボー界で成功を収める中のワンカットで、ひっそり小さく「クリのままで」というCDが描かれてて可笑しかった。どのマンガも(どういうわけか)時事ネタを仕込んでいない中で、唯一ここだけかもしれない。
ギャグマンガで派手にギャグを展開して派手にツッコむのも、ストーリー物で一話の中で盛り上げて次回に期待に持たせるのも、どのマンガでも複雑なコマ割りや展開を入れないところも、全てわかりやすさのためだ。こうした作品で訓練されていくおかげで、我々はだんだん複雑なものを読めるようになっていく、マンガリテラシーが育っていくのだから、こうしたマンガ作家と編集者と媒体に感謝しないとだめだと思った。
一番謎というか、意味がわからなかったのが「新ドラベース」というマンガ。球えもん(タマエモン)というドラえもんっぽい熱血ピッチャーが主人公の野球マンガ。あらすじを引用する。
野球が大好きな球えもんたちが大奮闘する未来型熱血野球ストーリー! 熱戦が続くアストロビッグドーム杯!! 多摩川ドラーズは前年度王者・江戸川ドラーズ相手に激闘中!! どうなる!?
「どうなる!?」って言われても……。
何一つわからない。基本的に自チーム、敵チームともメンバーはドラえもん的なロボットなのに、球えもんのキャッチャーだけ人間の少年なのも謎。そして指定されたひみつ道具が試合で使用可能らしいが、今話では使用されなかったのでよくわからない。ただ何か熱い勝負が繰り広げられていることは間違いなかった。作者コメントのページで「サッカーワールドカップで日本が優勝できますように」とサッカーを応援しているのもよくわからなかった。
全くギャグがなかったのもたまたま今話だけだったのかもしれないが、異彩を放っていた。
わけがわからないものは面白い。