やしお

ふつうの会社員の日記です。

サンリオが私に老いを突き付ける

 SHOW BY ROCKっていうサンリオの音ゲーアプリを遊ぼうとして、フレンドとかゲストとかガチャとかブロマイドとか編成とか、急に言われてわけわからんくてやめた。そのとき、おじいさんがケータイ使えないって感覚がわかるような気がした。


 新しい仕組みが登場する。それが世の中に浸透する。それを土台にした次の仕組みが出てくる。その「次の仕組み」は、今までの仕組みを前提にして出てきている。「今までの仕組み」はもうみんな知ってるものとして、説明を省いてくる。そうやって、手前の階段を壊しながら、次の階段を作っていく。そしてぼんやりしてると目の前に高い壁がそびえたってて、みんながその壁の上で楽しそうにわいわいやってるんだ。
 (楽しそうだな)と思ってじゃあ自分もやろうと思うけど、壁が高すぎて登れないんだよ。「なんとしてでもやるぞ!」って情熱があれば、ボルダリングみたいにおっしゃおっしゃって壁を登る。でも、もう壁があまりに高すぎるとか、元気がないとか、登るほどでもないかなって思ったらもう、あきらめちゃう。そうやって取り残されてく。


 音符が流れてきて、タイミングを合わせてボタンを押すのはわかるよ。音ゲーでしょ。そういう遊びをしたくてアプリをダウンロードしたんだ。
 チュートリアルで「こうすると高得点がもらえるよ」っていうのは教えてもらった。じゃあ遊ぼうかなと思ったら、いきなり「ブロマイドを編成して」「1枚、ゲストやフレンドのを使えて」みたいなこと言われてわからないよ。そのへんはあんまり説明なくいきなり始まったんだ。
 でもちょっと複雑なゲームとかだと、何はともあれまずは始めてもらって、だんだんルールがわかるようにしていくよ、っていうパターンもある。それかと思った。だけどしばらく進めていてもわからないままだった。
 途中で、全然クリアできなくなった。
 攻略サイトを見てみたら、「ブロマイドを鍛えろ」って書いてあった。もうむり。わからないから! 僕は音ゲーがやりたいだけなのに!! 太鼓の達人を検討する! それでiPad太鼓の達人を入れて、ちょっと遊んで、よく考えたら僕はプレステのSTOLEN SONGをやりたかったんだってことに気付いた。悪のギター屋にさらわれた布袋寅泰を救う音ゲー。布袋の歌しか出てこない、楽しい音ゲー
 そう、遠い過去の思い出をむなしく追いかけてただけだったんだ。HOTEI……。


 自分の父親や母親が、ケータイとかメールとか上手にできないのは、「年を取ると自動的に技術に疎くなる」と漠然と思って済ませてた。だけど、ただ年を取るからじゃないんだ。いつの間にか世の中みんながちょっとずつ階段を上って、上りながら段を崩している間に、取り残されちゃうんだ。気づいたときには目の前にとても登れそうもないような壁がそびえ立ってる。
 僕はフリック入力とかできない。ガラケーからブラックベリーへ移ってきたから。だからもし、フリック入力を前提とした何かが出てきたら大変だな、頑張らないといけないんだろうなと思ってちょっと怖い。


 それでもみんな上の方で楽しそうだな。ちょっと僕もやってみたいな。そう思って壁を登ってみようとする。でもなんかもうそういうのはいいや、って感じで簡単にあきらめちゃう。このあきらめの早さが昔より早くなっている感じがする。
 それは一つに、人生の残り時間がわりとはっきり見えて、「やらないこと」を分別して捨てていかないといけないと感じているのも作用しているのかもしれない。僕は今年で30歳だけど、もう50歳まであと20年しかないって切実に感じてる。「あれもやりたい」「これもやりたい」を本気で削っていかないと間に合わないと感じている。そんな中で、「よっしゃSHOW BY ROCKのシステムを体得してやるぜ!」という感じにどうしてもならない。「これを一生懸命やってる場合じゃないんだよな」となって切り捨てる方向に進んでる。そうやって進展を追わない物が出てきて取り残されていく分野が出てくる。
 あと中学生くらいの頃は何でもかんでも暗記しようとしてた。なんか暗記してソラで言えることがかっこいいと勘違いしてた。そんな勘違いによって色々広い範囲でものを覚えてた。そんな勘違いももうない。


 一種の老いってこういう感じでやってくるのかなってふと思った。そうやって選択的に老いを進めていくならそれもまたいいかと思った。
 サンリオがさ、僕にそんなことを前触れもなく突きつけてきたんだよ。