http://bookmeter.com/cmt/54705180
ひとつの国全体のシステム設計するって話だからものすごい。国民のやる気をなくさせる箇所を取り除いて、努力が報われる仕組みをつくって、目指す未来に向いてくれるよう細かくパラメーター(税率とか)を調整して、って広範な作業を、ひたすら住民の実生活を正確に把握してそこを足場にやってく。よく途上国支援でその住民の技術力から乖離した設備を持たせても使いこなせないし直せないし意味ないって話あるけど、まさにそこを徹底的に避けてる。利害関係のない完全な第三国人だったからここまでできたので、自国出身者が後に続かなかったのかな。
あと著者が去ってからだいぶ経ったあとルワンダで民族紛争が起きて大量虐殺まで発生してしまったけど、その経緯を見てみると経済格差の拡大があったのね。
これ、仕組み、システムって本当に生物だから、どんどん変わっていく現実に合わせてシステムもどんどん変えてかなきゃいけないんだけど、それが難しい。どんどん現実と乖離していくシステムに、それでも過去の成功の記憶がじゃましてしがみついてしまう。そうしてある瞬間にはみんなを幸せにしたシステムがいびつになって牙をむく。かつて格差を縮めるために構築された仕組みが、そのまま同じであることによって格差を広げてしまう。
システムをデザインする=シンプルかつ本気でフラットに現実を見つめてどうするか考えるっていうのは、かなり個人の資質によるところが大きい。その上、もしその資質を持った誰かが登場しても、十分成熟した社会で民主的な手続きでたくさんの人の手を経ると、率直で合目的的だった案が、複雑で無意味なものになったりする。
はじまりのときにルワンダがこの中央銀行総裁、このシステムの優れたデザイナーを持てたことは幸福だったんだろうけど、そのあとというものがどれほど難しいかもはっきり示してくれる本だった。
- 作者: 服部正也
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/11/01
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