やしお

ふつうの会社員の日記です。

上野千鶴子、小倉千加子『ザ・フェミニズム』

http://bookmeter.com/cmt/47662843

フェミニズムって固定的な結論じゃなくて理念だから(イズム一般がそうだけど)、理念×現状=結論(手段)で、現状認識が変化する以上結論も変化していく。その変化を、例えば70年代のウーマンリブからどうフェミニズムが出てきて、どう国家に回収されたりされなかったりして現在(01年)どうか色々な面で話して面白い。上野の方が実態/形式/理念を分けて把握する方針、小倉の方は未分化にする方針に見える。零れ落とす覚悟で構造を把握する方針に個人的には共感する一方で、未分化なところから勘で苛立って活性化させるのも面白いと思った。


 その他印象深かった指摘いくつか。


 婚姻についてフェミニズムという点からは相容れない、という意見は同じでも、婚姻が何かというと、上野が「性的な自由を放棄して相手に独占権を与えること」、小倉「プライオリティを保証すること(性的に限らない)」と違ってた。


 国家に思想の上澄みだけを取り込まれるみたいな過程にも触れられる。大学の先生になる、国や自治体の委員会に呼ばれる、社会的なポジションを築く、等々の形で取り込まれてく。それまでは日の当たらないところでしてた活動が、偶然国家政策に都合がよくなると取り込まれて、でも根本的な精神は取り込まれずに表面的な結論だけ取り込まれる。でも官僚とかの個々人はそうした形には無自覚で、本気で社会のためと思ってやってしまうという。


 男女雇用機会均等法が、建前だけ提供して実態を放置したので齟齬を生じさせたという話は暴対法みたいだなと思った。
建前「女性も頑張って働けばちゃんと報われる」
実態「出世、働き方、その他もろもろの面で疎外されるか男性化を強要される」
で、建前だけを浸透させたので実態との解離ができた。女性がその解離で引き裂かれた。暴対法も「やくざが存在する(構造がある)」という実態を無視して、やくざを消去しようとしたら地下化させ、ギャング化させた、という。
 雇用機会均等法は、法律を検討している時点で指摘されてた問題が、でも選択肢が増えるんだからいいでしょと矮小化されてしまった、といった指摘。


ザ・フェミニズム (ちくま文庫)

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