やしお

ふつうの会社員の日記です。

蓮實重彦『映画時評2012-2014』

http://bookmeter.com/cmt/52129009

蓮實重彦が言うなら見に行くかって人が少なからずいて、おすすめをタイムリーに6年間も発信してくれてたのありがたいけど、80手前の人にさせてたと思うと高齢者虐待みたいな気もする。「小説から遠く離れて」同様、本人がこれは自分の資質とは違う(誰かやってくれればやらない)と言いつつこのレベルでやる人が他にいなくて引き受けてくれるの親切だけど、世界全体としてはもったいないのかもしんない。「表層批評宣言」の通りずっと、作品で現に何が起こっているかを語り続けてくれる。エッセイや対談ではより作品間の位置関係が見えて面白い。


 時評は、紙数の制限が厳しいところに圧縮して書かれていて、連載時に毎月ちょっとずつ読むとちょうどいいけどまとめて読むと少ししんどいんだなと思った。時評の後の対談やエッセイだとそこがゆったりしてくる。
 読書メーターで255字って制限があって、いつも255字ぴったりまで圧縮してるんだけど、そうすると贅肉がなくなって読みづらくなるんだよなってこと思い出した。


 作品から意味を取り出したり、体系に組み込むために切り貼りしたりすることはできるし、普通の人はそうしないとまともに語れないけど、それを自粛した状態で、なお豊かに語れるっていうのは、スクリーンに実際に何が映されたのかを見るという姿勢によるし、その膨大な記憶があるからだ。


映画時評 2012-2014

映画時評 2012-2014