やしお

ふつうの会社員の日記です。

会社組織で快適にすごすために

 新人向けに「会社組織で快適にすごすために」という話をまとめた。


自分の制御権を他人に渡さない

 「自分が他人にコントロールされている」と感じると途端に満足度が低下します。それを避け、「自分は自分がコントロールしている」という実感を得るには、仕事を「させられている」という状態を、「自分の意思でしている」という状態に持っていかないといけません。実際には先輩や上司から仕事を受けているわけなので、(給料と引き換えに)仕事を「させられている」わけですが、意義や必要性を納得することによって実感を変えることは可能です。
 「何のためにそれをするのか」を確認して、「確かにそうするのが正しい」と納得できるまでアレンジできれば、自分の行動は自分が選択していると思うことができて快適です。とても幸いなことに、この会社では「こうするのはおかしいからこうしたい」と丁寧に話せば、納得のいく説明をしてくれるか、やり方を変えるかしてくれる人が多いと思います。


建前方面の防御力を高める

 仕事には建前と実態があります。「実際の効果」が実態で、「理屈上の筋道」が建前です。組織の中では、自身の言動についてこの両側面を同時に満足する必要がありますが、実態側への意識はあっても建前側がおろそかになっている人をよく見かけます。それで建前側で責められると本人は「なんで俺は実際がんばって成果出してるのに、そんなつまらないことでダメ出しするんだ!?」と意欲がダダ下がりになってつらいです。
 誰に話を通すべきか、誰(どの部署)がどう動くべきか、組織がどうあるべきか、といった「べき」論、筋論が建前です。建前はゲームのルールです。ルールブックは明示的に存在しないのに、ルールは確実に存在している(演繹的に導かれる)ため厄介です。しかし最終的に「理屈で正しいこと」には勝てませんので、正確に把握することが必要です。
 それに「ゴールを防ぐためにあえてペナルティを喰らう」というような、実態と建前を折衷させるといった応用も、ルールを正確に知らないとできません。うちの仕事じゃないけど引き受ける等々、建前から外れることは日常的に頻発しますが、どれくらい建前から外れているか、それが許容されるレベルかを意識している必要があります。ルールをよく把握して、楽しくゲームをしてほしいと思っています。


 この「建前」について、具体的にどう考えればいいか詳しく書いた資料があるので、別途そちらで説明します。↓
  会社のなかの筋を知る - やしお


仕事を捨てる

 製造業には「2S」という言葉があります。整理・整頓の頭文字をとって「2S」です。「整理」は物の要/不要を判断して不要品を捨てること、「整頓」は要にした品の置き場所を決めて他人にもわかるよう表示をつけること、という定義になっています。これは仕事でも完全に応用できます。特に「仕事を捨てる」という意識が大切です。
 その仕事は本当にやる必要があるのか、その精度(質)が必要なのかと検討する。不要なら、関係者に話を通して捨てる、というのが整理です。整理した上でやることにした仕事は、きちんと優先順位をつけて予定を立てて、関係者に見えるようにする、というのが整頓です。


 ただし、自分だけ負荷を軽減させて周囲が高負荷の状態だとひずみが生じるので、半径一人分くらいを目安に負荷をバランスするのがいいと思います。(ただしそうした調整作業は新人の仕事ではなく、私たちの責任です。)
 また時間と完成度(精度、質)はトレードオフで、しかも完成度が上がるにつれてかかる時間は指数関数的に(?)上昇するという認識が必要です。なので、1時間かけて7割の完成度を目指すのか、3時間費やして9割の完成度を目指すのか、といった自覚的な選択が、仕事に応じて必要になります。
 新人のうちはよくわからないので、指示された仕事をとにかくこなしていくという感じかもしれませんが、少しずつこれを身に付けないと、仕事にまみれて残業・休日出勤だらけで疲弊します。


相手にとって了解可能な状態をキープする

 他人から(なんだこいつ?)と思われないようにしましょう。人は理解不能な相手に対して、恐怖の裏返しで敵対的な態度をとります。居心地が一気に悪くなるので避けましょう。特に新人は周りにとって「よくわからない人」なので気を付ける必要があります。
 相手に「なんでそんなことしてるんだ(聞くんだ/言うんだ)?」と思われないように振る舞い、もし相手にその気配があれば自分から説明します。例えば何か質問するときに、「実はこういう事情/目的があってこの質問をしている」という情報をさりげなく入れるといったことです。アドバイスをもらえるおまけもあったりしてお得です。


 とりわけ「言い訳をする」という場面でこの意識が必要です。言い訳は、相手に「ああ、それすげえわかる」という気持ちを抱かせて、「それならしょうがないね」に持っていってお互いを幸せにするための行為です。正しさでねじ伏せたり、謝り倒したりする行為ではないという理解が必要です。
 また、言い訳で相手に理解してもらえるという勝算のない振る舞いは、あらかじめ控えましょう。


根本的な目的から検討する

 ここまでに挙げた4点を実行する際に支えてくれるのが「より大きな目的と照らし合わせて検証する」という習慣です。たとえば製造業なら根本的には「物やサービスを売って金を稼ぎ続ける」という目的に対して、合目的的であるかを考えるという習慣です。もちろんこれは、実情などの条件と掛けあわせて論理的に結論を導く、という技術とセットになってはじめて意味のあることですが、往々にして局所的にそれができていても、根本的な目的と照合して考えるということができていないために結論がズレているという場面がよくあります。妥当性に疑いを抱いたときには、一段階広いレベルの目的と照合する行為が役立ちます。
 全員が共有できる前提から出発して結論を導くことでしか結局、他人の理解は得られませんし、心底納得して行動することもできません。


無理しないでやってください

 会社に行きたくない、仕事が嫌だ、職場の居心地が悪い、そんな状況を予防してほしくて、そのコツを4つと、それらの基1つを紹介しました。しかしいきなりこれをめいっぱいやろうとするとかえってしんどくなって本末転倒になります。ちょっとずつ上達させよう、とりあえずできそうなとこからやろうくらいの感じでやってくれればと思います。


 蛇足ですが、栄養と睡眠と筋力は、仕事に限らず「生きやすさ」の基盤に必須なのでキープするのが絶対におすすめです。