やしお

ふつうの会社員の日記です。

吉本隆明『共同幻想論』

http://bookmeter.com/cmt/52107500

先に柄谷行人の「世界史の構造」や「遊動論」を読んでると理論として弱く見えるけど、50年前の時点でそもそも日本にこの射程範囲で基礎理論を立てようって人が他にいなくて独立でやってたこと考えるとものすごい。性の事が幻想の領域にくる=対幻想が起動する→兄弟/姉妹間の婚姻禁止から共同幻想・国家が起動するって話で、それは経済的下部構造をカッコに入れて語れるという作業仮説。この視点から民話と神話を見るとどんな光景になるかって話。整理する、体系的に語ることなしで、いきなり始まっていきなり終わる感じしんどいけど少し楽しい。


 てっきり他人同士の間で主観性=仮定が共有されるのは何だろうという話かと読む前に勘違いしていたのでちょっと違った。ぜんぜん違ってたというわけではないけど、もっと体系的に語って、こういう仮定です、その仮定からこの現象はこう語り得ますっていうのを横断的に進めていくのかと思っていたけど、基本的に柳田国男の「遠野物語」と「古事記」に絞って、どうやって国家が立ち上がってくるのかという話をメインに据えてた。最後まで読み進めてみると、他の分野にも実は広く足がかかっているらしい、というのがわかるけど、それを本人は(他の著書でも)語ってくれないという。だいぶ不親切って感じだけど、そんなのは自分でやれや、というスタンスなのか。
 ちなみに「経済的下部構造はカッコに入れて上部構造だけ見ることができる」というのが本書のスタンスだけど、例えば柄谷行人は「経済的下部構造をカッコに入れるとあまりに見えなくなるものが多すぎるから無理」ってスタンスになってる。


改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)

改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)