やしお

ふつうの会社員の日記です。

マネジメントができない上司を量産するシステム

管理職試験に合格した人には残業代を払わなくて済む(仕事は今まで通りで課長にもならないけど)
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残業が多い人から優先的に管理職試験に合格させて人件費を圧縮する/残業が少ない人は合格させると給料が増えてしまうのでなるべく不合格にする
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その後時がたってその合格者たちがちらほら課長になる(管理職試験に合格していないと課長になれない)
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もともとマネジメント能力や志向が乏しいために残業を多くしていた人たちだったため、課長になってもマネジメントが上手にできない


 こういうバグの機序というか、部分最適が引き起こす副作用、システムが示す変な挙動はとても面白い。ただ、自分がその下で働いているのが悲しい。
 以前に宴会の席で上司本人の口から「残業の多い順に合格させてるんじゃないかって当時言われてたんだよねー」、「同じ職場で一気に3人も合格するなんて変だし、残業めちゃくちゃしてる人たち3人だったから」というお話を聞いて、かなしい気持ちになった。噂レベルだとしても十分にあり得そうだと(名前のあがった人達の顔を思い浮かべながら)思った。今は残業がちな人でも試験に落ち続けていたり、逆にそうでない人があっさり受かったりしているので、そういうことはもうやめたらしい。


 根っこをたどれば「名ばかり管理職」がたくさんいる制度になっているから生じる不具合だ。管理職試験に合格しても課長や決裁権のある上司にならず、もとの仕事をずっと続けたまま「管理職」として残業代を支払われないという制度になっている。ちょうど自分が会社に入ったのが2008年で、マクドナルドの「名ばかり店長」裁判のあった年だったから当時びっくりしたことを覚えている。大企業でもそんなのまだあるんだと思って。
 これはたぶん、「名ばかり管理職を増やして残業代を圧縮しよう」という意図が最初から前面にあったというより、役職が変わるたび残業代を支払う/支払わない、勤務時間管理の対象内/外が切り替わる制度より、その人の職層や級に応じて一旦残業代支払い・勤務時間管理の対象外になった人は今後もずっとそのままという制度にした方が、制度設計や管理運用が楽だったからなんじゃないかと想像している。
 結果的に生じた「名ばかり管理職」のバグを逆に利用するっていうバッドノウハウが横行した末に、マネジメントができない管理職が増えるという副作用が出てくるという。


 以前から、マネジメント能力のある人よりない人の方が管理職になっていくメカニズムについて、めちゃくちゃ残業した人が「がんばってる」ってことで出世して、その人がその価値観のまま「あいつは残業して頑張ってるから」とまた次世代を引き上げてく、そんな連鎖の構造なんじゃないかなと想像していた。でもそれだけじゃなくて、制度面でもサポートされてるんだと思って。すごいよ。