やしお

ふつうの会社員の日記です。

報連相と、会社の中にある「筋」の関係

 高卒新人が研修を終えて今年1月から職場に来た。(うちは大手メーカーで検査担当の部署。)指導担当の若手から「なんか教えてあげて」と言われたので、会社の中にある「筋」と「報連相」の関係を、パワーポイントの資料にまとめてみようと思った。会社生活を快適に暮らすためには重要な認識だと思うけど、研修などでこういう話をまとまって聞くことが少ないとも感じている。一般的な話なので、どうせなら(スライドになる前のメモだけど)ここに置いておく。以前書いた↓のほとんど焼き直し。
 会社のなかの筋を知る - やしお


 本当は3年目くらいで一通り仕事ができるようになったタイミングでお話しする方がイメージしやすい内容かもしれないけれど、一方で早目に整理できていた方が得かなとも思って。
 それにしても、10~60代まで全年代がいて、高卒・高専卒・大卒・院卒(修士)までそろっていて、面白い職場です。


会社で働く技術

会社で働く技術には色々ある。2軸→4象限で分類してみる
・一般⇔特殊:どの会社でも使える⇔この会社でしか使えない
・事務⇔専門

事務 専門
一般 ワード、エクセル、
メールや電話、報連相
光学、機械、電気、情報、
製図、部品計測、規格・規制
特殊 社内ルール、人脈 製品知識、工程設計


・4象限どれも重要
・今回は「報連相」(一般・事務に位置)を考える。


報連相が分からない

報連相をちゃんとやれ」と誰もが言う。
→でも「いつ」「誰に」「どこまで」が分からない。
一見ケースバイケースに見えても、その背後には理屈がある。
この理屈が分かっていないと「怒られ」が発生する。


「怒られ」のメカニズム

あなたのせいで「困ったこと」が発生して迷惑をかけると、
あなたに対して「怒られ」が発生する。
→事前に情報を知らせて、判断できる環境を提供しておけば「仲間(共犯?)」にできる。
 「その時点で知ってたよね」になれば相手はあなたを怒れない。
→適切な「報連相」が「怒られ」の発生を抑止し、あなたの心身を守る。


報連相と筋論

つまり、相手が「何をされると困るか」を正確に推定することが、
正確な「報連相」の実施+「怒られ」の回避に繋がる。
※相手…上司(課長やGL)、担当者(同じ課や別の課の課員)、外注先など


「何をされると困るか」を考えるには「筋論」が分からないと難しい。
「筋論」が分かると「いつ」「誰に」「どこまで」報連相すべきかが見えてくる。


筋論(建前/ルール)

筋論=建前 はゲームのルール
どれだけいいプレー(仕事)をしても、ルール違反(筋論の逸脱)をすれば
ペナルティ(怒られ)が与えられる。


筋論はただの恣意的なルールじゃない。理屈に基づくルール
→だから筋論で責められると防ぐのが難しい。


会社で働く上でのルール

仕事をする上でいろんなルールがある。
基本、これに則ってプレーしないといけない。
文書になっているもの(明示的)となっていないもの(暗示的)がある。


【明示的なルール】
・法律:労働基準法とか下請け法とか、国際的な規格や規制
・社内ルール:労働協約就業規則、製図設計ルールや品質管理ルール、掃除や消灯などの職場ルール
※上位ルール→下位ルールへ、実運用に適するように落とし込まれているので、
 上位(法律とか)を意識せずに、下位(会社の規定)が分かっていれば基本的にはOK


暗示的なルール

文書化されているわけじゃない、はっきり見えるわけじゃない、
でも存在しているし、みんなそれに従って動いているし、
外れると怒られる、そんな「暗示的なルール」がある。
ここではそんな筋論を考える。

※40代・50代になっても分からない(筋論への意識が希薄な)人もいるし
 意識していれば20代でも正確にできている人もいる。
 →希薄だから優秀じゃない、という意味ではなくて、
  意識するとより自由に/衝突が少なく働けて快適、くらいの意味。
  「怒られ」の回避にも有効。


筋論の根本

「暗示的なルール」の出発点が以下の2点
※「誰もが『当然そう』と思うこと」から出発する。
 そうじゃないと「暗示的なのにみんなが従う」ルールが見えてこない。


①課長は使用者
 →労使関係のうち、課員は労働者で、課長は使用者
 →課長は課員の労働内容と労働時間を管理する
 →課長は課の業務をマネジメントする という建前がある。


②課には役割分担がある
 →なぜ「課」という単位が会社にあるのか?
 →人がたくさんいると、役割分担して専門性を持たせる方が効率的
 (社会が農家や医者や大工、と役割分担して成り立つのと同じ)


この2点を出発点に、以下いろいろ考えていく。


例1:課のことを判断・意思決定するのは課長

①課長は使用者(=課員の仕事を管理する)
②課には役割分担がある
の2点から、
「課長は課の役割を理解した上で課内でやる/やらないことを決める」
が導かれる。
よく課長は「人・物・金」を管理すると言われるのはここに基づく。


例2:課長指示じゃない仕事は無い

現実には、全てを課長が指示するわけではない。
課員が自主的に動いて仕事をしている。
※課長がどれくらい細かく指示するか/課員がどのくらい自分で動くかは
 課長の性格や課の規模、業務の性格によってまちまち


でも建前はあくまで「課長が課の全ての判断をしている」、
「課長はマネージャー、課員はプレーヤー」になっている。
「指示が存在しない」ではなく「省略されている」(建前は)と考えるのがポイント。


例3:報連相の意味

「課長が課の全てを判断する」の建前から考えると
報連相は「した方がいい」じゃなくて「必須」。
「言われなかったのでしませんでした」が許されない。
※情報がなければ「判断」が成立しない=課長の役目が成り立たない


じゃあ「全部が報連相の対象」?
→現実的には報連相をするもの/しないものがある。
(課長だって全員から何もかも言われても処理しきれないし)


例3-2:報連相の意味 - するしないの分かれ目

するもの:非定型的な案件、緊急度・重要度の高い案件
 ・「いつも通りに処理する」では済まなそうな話か?
 ・課としての意思決定が必要な話か?
 ・うちの課長が部長や他の課長から聞かれて知らなかったら困りそうか?
 などを考える。


これも「報連相していない」ではなく「省略している」と考える。
定型的な業務は「省略しても把握できる」ため省略される。


※新人なら指導員やGLに自分の進捗や状況をこまめに共有しておけばいい


例4:レポートライン

社長→担当執行役員→事業部長→統括部長→部長→課長→GL→担当者
という指揮命令系統⇔レポートラインが会社にはある。


レポートラインの無視はNG
(例)担当者→部長に直接報告すると、
 「課長には相談する意味も価値もない」
 というメッセージを部長と課長に送ることになる。


※例外もある:緊急度が高いが課長が不在なので部長に直接報告、コンプライアンス絡み、など
※課長に直接報連相はOKだけど、その前後でGLにも伝えておくのがいい。
※部長個人の性格によっては直接報告してほしいって人もいる。
 その場合でも課長やGLにも知らせておく。


例5:他の課との付き合い方

別の課の人から仕事を依頼されたりする。
勝手に受けたら「何で勝手に受けるの」と怒られ、
突っぱねたら「何で受けないの」と怒られる。


定型業務は分かりやすいけど、非定型な案件は判断が難しい。
 →基本はお互いの課長同士を通して依頼/受託する。
非定型でも負荷や影響度が小さければ担当者同士で受けられる。


受けるべきかはルールを参照する。
明文化されたルールに課の役割分担が書かれている。
 →普段からどの部署がどんな役割かを考える習慣が大事。
※うちはメーカーなので品質管理ルールが「どの部署が何をすべきか」(業務範囲)の拠り所。


やるべき部署がやるのが基本。
これが崩れると「役割分担して効率よく」がおかしくなる。


例6:出張中の報連相はより丁寧に

報連相をどこまでやるか」は建前と現実のバランス
 →出張中は、このバランスが建前側にシフトする。
課長の目の届かないところで仕事をする=マネジメントが難しくなる
 →情報を手厚く提供して課長に見えるようにする


・事前にやることを明確にして示す
・範囲外の仕事が発生したら伝える
・よその部署の頼まれ仕事は課長を通す
など
普段は省略しているレベルでも伝える。


例7:課長の決定を尊重する

課長が課の意思決定の主体
 →課長が判断・指示した仕事はやる
 (そういうゲームのルールと割り切る)


・自分の考えと違っていても従う(しかない)
・適切なタイミング・質・量で課長に情報を
 インプットして正しく判断できるようにする(しかない)


・別の部署の担当者とアクションや判断で意見が割れた場合
 →課長同士で話して決めてもらう


コンプライアンス絡みなど、より上位の建前に触れる話は
 「課長の判断に従う」が崩れる


例8:先回りして怒られる

自分のせいで困り事が発生することは絶対にある。
 →発覚する前に自分から「報連相」でダメージを最小にする。
※「なんでこうしなかったんだよ!」の怒られが
 「こうすれば良かったね」のアドバイスで済むかも


相手が「もし私があなたでもそうした」と思えるくらい
納得のできる説明をすれば怒られない。
 →逆に言えば、常に説明がつくような言動をしておけばいい。


例9:自分で判断⇔上司の判断 の矛盾

「自分で判断して行動しろ」と言われたり
「判断するのは上司の仕事だ」と言われたり
矛盾したことを求められる。
 →この間をリンクするのが「報連相


・相手(上司)ならどうしてほしいかを考える(自分で判断)。
報連相で上司の判断と自分の判断を擦り合わせる。
 →「自分で判断」と「上司の判断」が両立する。


例10:相談の技術

初級→判断を上司に丸投げ「どうしたらいいですか?」
中級→自分で考えて上司に確認「こうしようと思いますがいいですか?」
上級→上司の判断を誘導「どうしたらいいですか?」


上級は初級とほとんど同じに見える。
 →情報の質・量・並べ方が違う。
自分の中で結論の見当はつけつつ、
その結論に至る情報を提示して、
最後の判断を相手に下してもらう。
 →自分も納得できるし、相手の納得感も上げられる。


※初級~上級は場合に応じて使い分ける


報連相の作法

そんな視点で、いつ/誰に/どこまで「報連相」するか考える。


基本は相手の立場で「されたら困ること」を想像すればOK。
自分の周りの人間全員について
「されたら困ること」を全部先回りして潰せば
原理的に「怒られ」は発生しない。


※課長の立場だと、他の部署や部長から自課の動きを
 聞かれて答えられないと面目丸潰れ。報連相で絶対に防ぐ。
 品質事故対応と製品立上げの状況は特に。


不審者にならない

「どうしてそうしたのか」理由を聞かれて、
 ・○○さんに言われたから
 ・いつもそうしてるから
 ・なんとなく
は「怒られ」の発生原因
 ・こう考えたから自分はこうした
と言えるようにしておく。
 →自分の言動を合理的に説明可能な状態に保つ=不審者にならない
 →周囲から「仕事がやりやすい」「任せても安心」と思われる。
 →快適な職場生活になる。