やしお

ふつうの会社員の日記です。

水野俊平『台湾の若者を知りたい』

https://bookmeter.com/reviews/75013621

その気がなくても「おいしいです」「また遊びに行こう」ととりあえず言うのは日本人にとって「嘘をついている」という感覚は全く無いしマナーですらあると思ってるけど、台湾の人にとって「嘘」「極めて無礼」と感じられるのは、そう言われるとその通りだなと思う。台湾の学校制度や若い人の生活習慣や感覚についてインタビューも交えて紹介されていて、飛行機で3時間ちょっとで行ける隣国なのに何にも知らなかったんだなと思う。


 台湾で使用される言語には、国語(標準の中国語)84%、閩南語(ビンナン語)82%、客家語7%、原住民言語(アミ族語、タイヤル族語、ルカイ族語等)1.4%がある。(パーセンテージは日常的に使用する人の割合。)台北の地下鉄では国語→英語→閩南語→客家語の順でアナウンスがある。日常生活やテレビドラマでも国語と閩南語が混在された会話がされることがある。
 中国語を学習しようとすると「ピンイン」というアルファベットで漢字の音を表す表記法を必須で覚えることになるけど、台湾には「注音符号」という漢字の一部を取り出した日本でいうカタカナに近いものがあって(中国にはない)、小学4年生までは教科書にルビとして振ってあるし、パソコンやスマホの文字入力にも使われてるし、マンガの擬音語にも出てくるから覚えないと生活に支障をきたす。


 登校時間は小学校〜大学までおよそ8時前で日本より早い。家で朝食を取る習慣はないので途中で買って外で食べるか教室で食べるかする。共働きが多いため小学校に学童保育や放課後クラスがあり16〜19時までいられる。高校生でも自習や予備校で帰宅が22時〜23時になるという。教室内の飲食は比較的自由。
 小学校6年+中学校3年が義務教育。ほとんどが進学し、3年制の「高級中学」と5年制の「専科学校」がある。日本の高校と高専に近い。
 高校卒業後の進学率は97%。日本以上の学歴社会で学歴による賃金格差も大きい。進学先は大学、独立学院(単科大学)、科技大学、専科学校の主に4つでまとめて「大専校院」と言う。年度は9月スタート。大学に学生寮が設置されているのがメジャーで、5人に一人は寮に入っている。
 現役の軍人が「軍訓教官」として高校や大学に配属されている。警備員と生活指導の先生を兼ねている。学活を仕切ったり、大学では学生の交通事故処理や不動産トラブルにもあたっている。


 冷めたご飯は嫌われるのでお弁当の保温器が教室に設置されている。
 「スクーターに乗れるようになったら一人前の大人」という価値観があり、18歳になった翌日に学校を休んで免許を取りに行く人もいる。筆記試験のみで免許が取れる。男女とも大学入学時にスクーターを買う。
 兵役がある。18歳以上の男子。もともと2年間→2008年に1年間→2013年に4ヶ月、と短縮する方向に制度が変わってきている。学生は猶予制度があるため卒業後に就く人が多い。
 日本のように新卒一括採用ではないため大学生の「就活」はない。卒業してからまず兵役に行って、家事手伝いや海外留学、ワーホリによる海外勤務などを経て20代後半で就職することも珍しくない。


 イングリッシュネームを持っている。(鴻海の会長のテリー・ゴウとか歌手のテレサ・テンみたいな。)自分が出張で台湾に行ったときも、相手の会社の人の名刺は英語の面にはイングリッシュネームが、裏の漢字の面には本名が書かれていた。社名も英語名と台湾名の両方があった。(鴻海もフォックスコンという英語名があるし。)「みんなそうなのか?」と聞いたら「製造現場の人は英語名は持ってない。英語で仕事をする人だけ」と答えていた。(出張先が製造業だったので。製造現場の人達は英語は喋れなかった。)マレーシアに出張した時も相手はみんなイングリッシュネームを持っていたので、むしろ英語で仕事するのに英語名を持ってない日本の方が珍しいのかもしれない。

台湾の若者を知りたい (岩波ジュニア新書)

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