やしお

ふつうの会社員の日記です。

塙宣之『言い訳』

https://bookmeter.com/reviews/86106014

ああ、M-1の審査員ってここまで考えてやってるんだ、ってある種の感動を覚える。観客の感情に作用させることを目的とした営み、演劇や芸術を言語化するのは困難だとは思うけど、きっと本人が「ウケる/ウケないの差は何だろう」とかを日常的に真剣に考えずにいられないから、この水準で具体的に語ることができる。M-1のレギュレーションと芸人の相性があることは認めつつ、でもM-1の形式を批判したりあるいは過剰に適応するのは本末転倒だ、それを分かった上で賞レースと付き合うのがいい、という提言はとても健全なものだと思った。


 漫才でもM-1の4分間に合うものと、30分間やるのに適したスタイルとがある、と言われると、例えば小説でも掌編~長編で要求される特性や技術がまるで異なるのと同じことで当たり前なんだけど、改めて指摘されると(そっか)と思って面白い。
 同時代の漫才師たちの特徴(や欠点)を非常に明快に指摘していて、どちらかというとM-1周辺をメインにした話にはなっているけれど、もし時代的な展開も加えてもっと体系的に語られるようなものが出てきたらぜひ読んでみたいなという気持ちになった。

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)