やしお

ふつうの会社員の日記です。

板橋拓己『アデナウアー』

https://bookmeter.com/reviews/90529305

アデナウアーが首相として強権的に長期政権を維持したことでドイツは第二次大戦後に民主主義を定着し得たという指摘は、一見逆説的なようだが、「アラブの春」により中東各国で長期独裁政権が倒されたがチュニジア以外で民主制が定着せず混乱を引きずっている状況を考えると、初期段階では「民主制を信奉する長期・強権的な政権」が必要なのかもしれない。WW1中・後にフランス・ベネルクス3国の国境に近いケルンの市長を務め、WW2後にドイツ首相として舵取りを成功させた手腕・技術が詳述されて非常に面白かった。


 現在のドイツが「独仏枢軸」と呼ばれるほどEU内で中心的な位置にいるとしても、大戦後からただちに「ドイツが西欧に追従する」路線のコンセンサスが取られたというより、まずアデナウナー個人にその基本路線が頑として存在し(それを他国が承認し)アデナウアーの政治力によって推進される中で、既成事実として定着していったという過程がある。