http://book.akahoshitakuya.com/cmt/14632106
「具体的に力になってやることも出来ぬ」(p.21)と抽象的にいう瞬間がわたしをよく表している。わたしはほとんど見る側にあって作用はしない。姉の乳首も一方的に見せられ、自分の癖、身体、記憶も徹底的に見、卵割りも見てるだけ、そして最後にはノートを読むことになる。一方で自分の乳首は見せないし、「仕事は上手くいってるの」の問いは曖昧に返され、自分から提案した花火は結局実現しない。無力さを装った強固な立場こそが結局は語り手なのだとしても、それが揺らぎもせず一人称として露にされるのは読んで暗澹とした気持ちにはなる。
関西弁が入り込んでリズムがすごい、と褒めるのをよく見かけるけれど例えば町田康の、標準語の会話と河内弁の地の文のリズムの方が優れていると私は思います。
でも身体感覚の話あれこれや、巻子が自分の乳首語りをする場面は面白かったです。
- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/09/03
- メディア: 文庫
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