ドラマやアニメで刑事とか探偵とかって「亡くなった○○さんもあなたの復讐など望んでいないはずですよ」みたいなこと言うでしょ。犯人のいちばん自然なリアクションって「お前に○○の何がわかる！」とか「○○の気持ちは関係なく俺が勝手にやったことだ！」とかの激昂だと思うんだ。
自分の肉親か親しい友人が亡くなったと想像してみると、生前のその人をほとんど知らない人（葬儀屋の人とか？）から「故人様もお喜びだとお思いですよ」みたいなこと言われたとして、相手が気づかいや儀礼で言ってくれてるんだなと理解はしていても、やっぱり、「知った風なことを言わないでほしい」とちらっと思うとおもうんだよね（絶対口にはしないけど）。そもそも精神が弱ってるからうぇーん、そうだょねぇー、ともなるとは思うけど、一方で同時に、（あなた故人のこと知らんでしょうよ？）とも思うんじゃないかしら。
それだから、犯人にしてみたら、もう相当考えに考えた上で、「○○だったら絶対にこの無念を晴らしたいはずだ、復讐を願うはずだ」とか「○○がもしここにいたら、復讐なんてするなって言うに決まってるだろうけど、でも、自分の気はどうしても済まないから、これはもうただ自分がそうしたいと思って、あいつを殺す」とかに達して、殺してるはずなんだ。そこへ後からきた刑事かなんかが知った口を叩くんだから、そうとう苛つくよ。
「復讐など望んでいませんよ」とか刑事に言われて女の犯人だと泣き崩れて一件落着、みたいな、後悔の念があふれましたみたいなていで描かれる。勢いだけで突っ走って殺してみたけどよく考えたら後悔してる、という設定かもしんないけど、むしろ、ぜんぜん関係ないやつにそんなこと言われて、あんまりにも悔しくて悔しすぎて、もう言葉にすらならずに嗚咽してる、の方がまだ納得がいくかんじ。
それか男の人とかだとがっくり肩を落として「そう……ですね…………」と言葉を振り絞る、みたいな、やっぱり後悔の念があふれましたみたいな描き方。もしほんとにそんな犯人いたとしたら、すんごいやさしい人だよ。刑事だか探偵だかが（うっひょーっ俺いま、すっごくいいこと言ったーっ）っていう顔してるし、周りの人たちも（もうここで締めてください）って顔してるから、はらわた煮えくり返りながら、それをなんとか抑えて、空気呼んでの、「そう……ですね……」だからね。
ほんと刑事とか探偵とかは帰ってから反省してほしい。あなたがたの気持ちよさは、犯人のやさしさでできてます。
