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マジてんこ盛り。語り口、対象との距離感、形式(最後に新聞記事や詩まで登場)、外部の参照(現実の事件や神話や聖書)、キャラ付け、比喩、色遣い(大砲の黒と衣服や空気の白の対比等々)、心理描写……それらを同時に立ち上がらせていろんな差で高度に見せてくる。なのに、下品じゃない。必要性とぴったりきてて。本当にメルヴィルは、ビリーのような完璧に神聖な愚かさを誰かの上に目撃したことがあったに違いない……という小説と無縁の下世話な推測をついしたくなる。俺もあるの。中学ん時同級生の上に見たんだ。この世界に確かに存在する。
途中、これじゃあほとんど恋愛小説じゃないか! と思ってうれしくなっちゃった。もうこれくらい微妙な、恋愛とはほとんど呼び難いほどの距離と齟齬を見せてもらえないと満足できない体質になってんの。めんどくさいね。
- 作者: ハーマンメルヴィル,Herman Melville,飯野友幸
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/12/06
- メディア: 文庫
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