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水だらけ。かつて海だった土地、蛇口からぽたぽた落ちる滴、母が死んだ日の土砂降り、祖母が死んだ川、シーツに染みを作るバーボン。姉は太古の海の夢を見て、和恵は沼の湯気みたいなオーラを発し、恋愛中の祖父は「どろどろの液体」を流す。現実とイメージの両方で液体が溢れてくる。比喩や象徴に留まらずほとんど駆動力の源泉みたいだ。そして妹・ユリコは川が大嫌いと言明する一方で、一度も名前を呼ばれない姉は、かつて海だった土地を気に入る。水にコミットできる者だけが物語を生きて語る資格があると言わんばかりだ。下巻の崩れ方が楽しみ。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 文庫
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