やしお

ふつうの会社員の日記です。

ViVi 2014年6月号

 赤文字雑誌では発行部数が最大というViViを初めて読んだ。
 文体があまりにイメージ通りで驚いた。ファッションに関する用語、ブランド名やアイテムの名前、形容詞といった語の特殊性(ファッション誌の中では一般性)はあっても、「ファッション誌っぽい」というイメージそのままだったので驚いた。

今、お気に入りすぎて毎日のように持っているのがスパンコールで出来たショッピングバッグ風デザインのAshishのバッグ。コレ持つだけで普通の格好がおしゃれに見えるよね♪ なんか、春の立ちあがりって実際には寒くてなにを着ていいかわからなくなるじゃないですか? そういう時期にitブランドを取り入れると、コーデが新鮮になっていいと思う。

加藤ミリヤのファッションショー! ―私服オンリー連載―」(p.27)


 加藤ミリヤに限らず例えば水原希子のインタビュー記事でも文体は変わらない。
 もし小説の中で書かれていたらリアルさが足りないように感じる。通俗的な「ファッション誌」のイメージを描いて真にファッション誌を創造したものではないように感じそうだが、現にViViがこうなっている。
 あまりに自分自身のイメージ(ファッション誌のイメージ)に似すぎている。それは文体に留まらないのかもしれない。そうして読み手のイメージを裏切らずに安心させてくれる。


 ViViは素材がいい、シルエットがいい、というより、柄がかわいい、小物がかわいい、色がかわいい、といった価値基準に重きが置かれているようだった。「子供っぽくない」、「大人」、「オトナ」という語で語られている服装も一般に「大人っぽい」と見られる水準ではなく、あくまでかわいいの範疇の中での振り幅だ。大学生、20代(前半)を想定しているようだった。
 以前読んだCanCamに比べると読者モデルの比率が小さいようだった。芸能人や専属モデルが多く、中でもハーフやはっきりした顔立ちのモデルが多い。また屋外・室内のロケ地も外国や外国風が多い。とは言え海外のファッション情報やセレブの動向を熱心に伝えているというわけではない。今号の特集も、おしゃれコスパ服、1万円以下のローテの紹介であって、庶民感覚(?)をあくまで維持している。少し浮世離れして読み手の憧れを煽り立てながら、そこまで浮き足立っているわけではない、というバランス感覚が優れているのかもしれない。
 そうした視点で見れば「Ayuのデジデジ日記」という連載にも納得がいく。浜崎あゆみのセレブな生活をプライベートな写真で紹介する人気連載。ファーストクラスに搭乗し、海外のリゾート地のヴィラにステイして、プライベートビーチでヨガをして一人英気を養うAyu。セレブな生活への憧れと、海外セレブほどには遠くない距離感を両立する。実際、真剣に写真を見て、Ayuの手書き文章を読んでいると(あたしも、あんな、生活、いいなあ……)という気持ちに、確かになってくる。


 赤文字雑誌は男受けを意識したファッションだという解説を読んだことがあるが、実際に読むと表面上にはモテがまるで現れてこない。あるファッションが選ばれるのも、かわいいから、今年はこれがきてるから、であって男受けがするからだ、などと書かれることは全くない。十分に内面化されてもはやあえて引き起こす必要もないのかもしれない。了解済みを説明すれば露悪的で無粋なものと見なされて嫌われる。


 次はさらに平行移動して赤文字雑誌、青文字系とその違いを見ていくのも楽しそうだ。一方で垂直に移動して、同じ出版社のターゲット年齢層が異なる雑誌を見ていくのも、年齢によって服装が微妙に変化していく(するべきだ)という、よく考えれば奇妙なあり方が現時点でどう実践されているかを垣間見れると思うと、わくわくする。いずれにせよもっと読まなければまともに語れない。