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民族、ナショナリズムの歴史的な事例や認識を提示する本。なぜその話をするのかを示したり、章や本全体をまとめたりしないスタイルなので読むのが少ししんどい。社会内の差別によって民族意識が強化されるという話で思ったのが、例えば上京した人が出身県に何か愛着があって方言も喋れるけどそれで差別を受けるわけじゃない、子供は完全に東京の人間という自意識があって多少の寂しさを覚えてもそれでいいと自然に思える、くらいな状態が本当はお互いにとって幸福な民族意識ってことかもしれない。で、それがいかに困難かが多面的に思い知らされる。
民族とは何か、ナショナリズムとは何なのか、を規定することがそもそも難しい、なにか定義付けしてそこから出発するといつのまにかすり抜けてしまう。差別を糾弾することも難しい。差異主義に基づく差別を攻撃するために、普遍主義を持ってくると、普遍主義を基にした差別がはじまる。普遍主義に基づく差別に対して差異主義による反差別が、そのうち差異主義による差別に転化する。
そういうわけで、民族問題をシステムとして解決するのがいかに困難か、「こーすりゃいーじゃん」と思いつくことはほとんど悲劇につながっているということを思い知らされる本。
- 作者: 山内昌之
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/02
- メディア: 文庫
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