やしお

ふつうの会社員の日記です。

心理的バッファとしての貯金

 金があればあるだけ遣ってしまう。そして金がないと言って嘆く。給料が少ないから仕方がないという。そう言ってタバコを吸ったりディズニーランドに行ったり酒を飲んだり、ソシャゲに課金したりスタバに行ったりパチンコをしたり、MVNOに切り替えることもしないし自炊もしないしスマホもすぐに買い換える。それで本人が幸せならいい。しかし金のなさに怯えて生きている。貯金がないから、冷蔵庫が壊れた、虫歯になった、そんな些細なことが突発するだけで詰んでしまう。その不安だ。たった10万、20万の貯金さえあれば解消される程度の不安に、毎日を苛まれて一生を過ごすのはあまりにつらい。


 欲求と欲望をまずは区別する。眠いから横になりたい、お腹がすいたから何かを食べたい、寒いからコートを着たい、そうしたものは欲求だ。いいベッドで眠りたい、おいしいものを食べたい、きれいなコートがほしい、彼女がほしい、海外旅行に行きたい、それらは欲望だ。欲求はあくまで生理的なものだ。一方で欲望は他人との比較によってしか生じない。嫉妬だ。美しい宝石や豪華な食事を一度も見たことも聞いたこともなければ欲することはない。過去の自分を含めた他人が、それを持っているのを知って、その他人と自分とを比較したから欲しくなるだけだ。欲求は生理的なものだから抑え込むのは難しいが、欲望は心理的なものだからコントロールが可能だ。まずは「何かを欲しい/したいと思う気持ち」というものが自然だとか本能だとか思い込むのをやめる。その思い込みが晴れるとようやく、では自分が何に金を遣いたいのか、本当にそれを自分はしたいと思っているのか、という問いを自分に問うことができるようになる。わけもわからず欲望に振り回されることから解放される。
 ただし脳の変質を伴ったアルコールや麻薬、ギャンブルの依存症は、もはや欲望から欲求へと変質しているからコントロールはできない。専門医の治療が必要になる。
 欲求と欲望を区別するという認識を持ってから、それが実際に機能し始めるのは3年後や5年後かもしれない。それでも残り数十年分の一生をそのままにするよりはマシだ。