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単に「6000人のユダヤ人にビザを発給して命を救った」とだけ言えば人道的な外交官以上のものではないが、「外務省の判断でビザは無効になる」という当然の制約があることを考えると「本国の意向と反する形で大量のビザを発給して本国に外国人を殺到させる」という行為を成立させるのは異常なことで極めて困難だとわかる。それを杉原は、正確な情勢判断に基づいて時間操作や根回しや言質の引き出し、ルールのギリギリを突いてトリックを積み重ねることでこの無理筋を現実に成立させた。ほとんどミステリーやサスペンスのような話だ。
あとそもそもどうして杉原はリトアニアに赴任していたのか、という経緯を見ていく過程で第二次世界大戦前・中でソ連とドイツに挟まれて、ポーランドの隣国、バルト三国の一つとしてどういう立場に置かれていたのかという話もとても面白かった。
- 作者: 白石仁章
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/09/27
- メディア: 文庫
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