やしお

ふつうの会社員の日記です。

メーカーでよくある開発の人の不満

 たぶんありふれた話なんだけど、飲み会とかで「開発部門と製造部門でちゃんと給与の差をつけるべきだ」という話を開発部門の人がしてると、(今目の前にいる私は製造部門の人間なんだけどな)と思ってどんな顔していいのかわからなくなる時がある。実際には黙ってにこにこしながら、うんうん頷いている。


 別のメーカーに転職するという同期がいたので、久しぶりに同期入社の人達で集まって飲食会があった。その辞める人が、「降ってくる仕事をこなすだけの人と、新しい製品やサービスを生み出す人では、後者の方が明らかに価値を生み出しているのだから、きちんと給与や待遇で差をつけなくちゃだめだ」というような話をしていた。
 その目の前に座っていた僕は「降ってくる仕事をこなす」部署で働いている人だった。彼は別に僕に向かって直接言っているわけではなかったし(部門の差の話ではなく個人の姿勢の話をしてるのだとも思う)、参加者のうち自分以外の同期がみんな研究・開発・設計部門の人達だったということもあってたぶん忘れてただけだと思う。


 僕は検査(と技術)部門にいて、製品が企画されてリリースされるまでの全体のプロセスの中では最下流に位置している。企画や開発に比べれば「新しいものを生み出す」という部門ではない。部門の中で「降ってくる仕事をこなすだけの人か、あるいは改善したり工夫したりより良くしている人か」といった相対的な個人差はあるとは思う。
 実際、いかに無理・無駄なくコストを抑えながら事故を減らす工程や環境を構築できるか、新製品の立上げを素早く抜けなくこなすか、外部規格に対して体制をどう構築するか、外注先との関係をいかに構築するか、限られた人数で複数の案件をどう効率良くこなすか等々、頭と手を使ってより良くしていくポイントは無数にあって、それなりにやりがいを感じながらお仕事している。
 とはいえ、プロセスの下流に位置する以上、部門として「降ってくる仕事をこなす」位置付けなのは事実で、「大きな価値を創出し得るか」という観点では企画・開発部門のインパクトの方がずっと大きいのは確かだと思う。(逆に大きなダメージを与え得る職場ではあるかもしれない。)
 その意味で、彼の言う気持ちはよくわかるという気もしているから、うんうん頷いて、にこにこ聞いているのも、別に嘘じゃない。


 ただ思うところもいくつかあって、一つが、もともと自分で選んでこの部門にいるわけではないということ。新卒一括採用されて、本人の希望と無関係に配属されてしまうわけで、「でも給料や待遇で差はつけないから頑張ってね」という前提があるから耐えられるみたいなところがあるので、「最初から職種別で採用して、職種間での異動はなし」というシステムとセットじゃないと成り立たない。
 そうではない新卒で一括採用されたその同期の集まりの中で、(えっそれをあたしの目の前で言っちゃうの……)という気持ちにはなったのだった。


 もう一つが、「大きな価値を創出する人・組織が、大きな金銭的な報酬を受けること」が当然だと言えるのだろうかという疑問で、これは最終的に「資本主義ではない世界システムにしよう」みたいな話になってしまう……


 たぶんこういった話は「メーカーあるある」みたいなことで、開発の人が「何で自分達の給料が生産部門の連中と同じなんだ」って不満を漠然と抱えているのは割とどこも同じなんだろうと思う。
 年功序列型賃金、終身雇用、新卒一括採用、職務別でない給与体系、総合職……といった日本に独特の雇用形態は相互に関連してる、という話をちょっと前に書いた。
年功序列の賃金をやめる話 - やしお
 ちょうど今年から年功序列型賃金を会社がやめてて、それに伴って中途入社・退社も増えてきている。そうすると他の旧来の制度とは矛盾が出てくるので、それもだんだん変わってくるのか、それとも矛盾したまま運用されてくのか、どっちになるのかなと思いながら見てる。