やしお

ふつうの会社員の日記です。

多和田葉子『尼僧とキューピッドの弓』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/9325270

第2部に入った瞬間が猛烈に刺激的だった。1部の最後で急に現実感を失って夢のようになるのが、2部の冒頭で「夢でも見ているような気がした」と始まったときはやってくれるぜと思った。1部での多数の同性間の関係性と、2部での二人の異性間の関係性を描く対称性や、1部と2部がお互いを相対化させていくところなどで、2部はわくわくしながら読み進めた。最後の『これはわたしが決めたことではないかも知れないけれど、やっぱりわたしが決めたことなのだ』という認識は柄谷行人「倫理21」と通底している。この責任の取り方にはぞくぞくする。

尼僧とキューピッドの弓 (100周年書き下ろし)

尼僧とキューピッドの弓 (100周年書き下ろし)