やしお

ふつうの会社員の日記です。

菅野完『日本会議の研究』

http://bookmeter.com/cmt/57906939

他の業界団体(=票田)が経済力の低下に伴って弱体化した結果、日本会議が政権への影響力一人勝ちになったって指摘もあって、それは経済力や国力が弱まるほど、国家に自尊心を預けてるタイプの人はますます鬱屈してくから力を保てるし、学術的に稚拙な論を平気で展開しちゃうのも、目的が現実性・有効性より個人の自尊心の確保だからと思えば理解しやすいのかもしれない。情報を丁寧に積み上げて全体像を明らかにする作業はインテリジェンスそのものって感じで、それをジャーナリストじゃなく無関係のサラリーマンがやったってのが凄いけど悲しい。


 70年代の大学闘争、左翼学生への対抗からスタートしていて、その中でも長崎大学のメンバーが組織を形成していって、今も中核のメンバーはそのままに日本会議周辺を作り上げていってるんだ、って話でとても面白かった。そしてそれは生長の家が母体になっているという。
 周縁の人たちは、国家にプライド預けてる人たちなのかもしれないけど、中心にいて組織をまとめ上げている人たちはむしろ自己保存・拡大の習性に従っていただけ、単に組織を大きくして安定化させるってことだけを考えていった結果が、そうした国家にプライドを預けてるタイプの人たちを広範に取り込むことにつながって、結果的に右傾化してくし政権への影響力も強めてくって感じだったのかもしれない。


 衆議院小選挙区制に移って、個人の能力から党への帰属へと政治家のインセンティブを移行させて、それは党首への権力集中を意味するし、個人の能力低下を意味するんだけど、そこを押しとどめるのってもう非政権党への転落の恐怖/政権奪取への期待しかない。でも民主党政権があんなことになっちゃって、この前の参院選なんて「自分が政権を担うぞ」って主張じゃなくて「与党はけしからんですねえ」って主張になってて、これじゃ自民党一党支配で残りの野党はちょっとした不満のはけ口としてしか機能しないなんてまるっきり55年体制で、その抑圧機構が消滅している状態になってる。昔の55年体制はそれでも中選挙区制自民党の内部で争い合ってたから、それでも質を担保する契機があったんだけど、今の小選挙区制での一党独裁だとどうしようもない。
 そういう状況下、もう歯止めをかける装置(二大政党制)が機能してない中で、結果的に日本会議系の現実から遊離した、自分のプライドを国家に仮託した論がそのまま実現されようとしているっていうのは、もうほとんど悪夢って感じ。


日本会議の研究 (扶桑社新書)

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