https://bookmeter.com/reviews/67821819
日本の富裕層はあまり寄付をしないと言われるが、昔からそうだったわけではなく、安政地震の被災時は「市民を支援するのは政府(幕府)ではなく富裕層(大店・大商家)だ」というコンセンサスがあって、市民側も当然要求するし、富裕層側もそれに応えるのが当然だというのが実態だったらしい。明治に入って自治権を回収して(中間勢力を解体して)中央集権的な国家を構成し直すことで「政府が世話をして当然」という価値観への転回が起こったのかもしれない。
当時の江戸が、人口60万人に対して町奉行の役人は240名程度しかいなくてどうやって治安を維持していたのかというと、名主が264名いて、名主の住居が役場に近い存在で行政権・司法権が与えられていたという。さらにそれが17組に編成された町番組という組織があって、今で言う「区」みたいな規模感だったのかもしれない。
雷が鳴ると「桑原桑原」と言うのと同じように、地震が起こると「世直し世直し」と言う習慣があったとか、災害時に千坪程度の仮設住宅を半日で建設する能力があったとか、江戸のどのエリアが被害が大きくてどこが軽微だったかとか、「へえ」と思うことが多かった。
- 作者: 野口武彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/12/09
- メディア: 文庫
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (8件) を見る