やしお

ふつうの会社員の日記です。

野口武彦『安政江戸地震』

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日本の富裕層はあまり寄付をしないと言われるが、昔からそうだったわけではなく、安政地震の被災時は「市民を支援するのは政府(幕府)ではなく富裕層(大店・大商家)だ」というコンセンサスがあって、市民側も当然要求するし、富裕層側もそれに応えるのが当然だというのが実態だったらしい。明治に入って自治権を回収して(中間勢力を解体して)中央集権的な国家を構成し直すことで「政府が世話をして当然」という価値観への転回が起こったのかもしれない。

 当時の江戸が、人口60万人に対して町奉行の役人は240名程度しかいなくてどうやって治安を維持していたのかというと、名主が264名いて、名主の住居が役場に近い存在で行政権・司法権が与えられていたという。さらにそれが17組に編成された町番組という組織があって、今で言う「区」みたいな規模感だったのかもしれない。


 雷が鳴ると「桑原桑原」と言うのと同じように、地震が起こると「世直し世直し」と言う習慣があったとか、災害時に千坪程度の仮設住宅を半日で建設する能力があったとか、江戸のどのエリアが被害が大きくてどこが軽微だったかとか、「へえ」と思うことが多かった。

安政江戸地震 (ちくま学芸文庫)

安政江戸地震 (ちくま学芸文庫)