やしお

ふつうの会社員の日記です。

柄谷行人『マルクスその可能性の中心』

https://bookmeter.com/reviews/90529387

一旦構造が形成された後から見ると、構造の結果がその原因としてしか見えなくなり結果と原因を取り違えてしまう(遠近法的倒錯)という指摘がされる。そしてこの倒錯に立脚して考えることで、さらに起源が見えなくなり構造を強化してしまう。それを免れるには構造や体系の形成過程を見る(想像する)ことが不可欠であり、それこそが「読む」という行為で、本書に限らず柄谷行人の著作はそうした営みになっている。遠近法的倒錯はこの疑い方の様式を一度知ると、概念や理念、イデオロギーなどの形で至るところに存在していることに気付く。


 マルクスは対象をドイツの哲学(『ドイツ・イデオロギー』)、フランスの政治(『ブリュメール十八日』)、イギリスの経済(『資本論』)と移しているが、哲学者でも政治学者でも経済学者でもなく、その言説によって一体何が見えなくされているのかを考える点で一貫しているという。これは柄谷行人自身が、文芸批評から現在の思想家へと変わってもその読む姿勢では一貫しているのと同じことだろうと思う。