やしお

ふつうの会社員の日記です。

高卒新人に資産運用を説明する

 今年入社の高卒の新人と雑談していて「会社の確定拠出年金のこととか何を選ぶのがいいとか分からない」という。集合研修でも制度そのものの解説はあったけどよく分からず、学校でも習わなかったので、漠然としか分からないと言っていた。
 それで「自分はこういう理解で、こうしている」を整理して伝えることにしたのでそのメモ。結論としては「長期でインデックス投信」なのだけど、そこに至るバックグラウンド等も含めて説明したいと思った。


前提

  • そもそも趣味や仕事に注力したいので、株や不動産を一生懸命やりたいとは全く思っていない。
  • 自分は普通の会社員で、その道のプロ(銀行員や証券マンやファイナンシャルプランナー)ではない。
  • 大損は絶対に嫌だし、時間を遣いたくない。株の勉強とかもしたくない。

 

経済システム

  • 現在は「産業資本主義」というOSで世の中が運用されている。
  • このシステムでは「富の総量が時間の経過で増えていく(右肩上がり)」ことが数学的モデルで証明されているとのこと。
  • 例えば「株価」という指標で見ても実際にそうなっている。
  • 「長期的にはゆるやかにインフレする(物価や賃金水準が上がる)」のもその一環。
  • 「右肩上がり」は、時間軸を大きく取る(グラフを遠くから見る、100~200年くらい)とそうなっている。
  • しかしグラフを拡大して見る(時間軸数年)とギザギザ上下に変動していて必ずしも「右肩上がり」にならない。
  • 下のグラフ(一番上)は米国の株式市場(S&P500)の150年間のグラフ。縦軸が対数軸なので「右肩上がり」というより「指数関数的に増えている」。そのうち一部期間を取り出すと(中と下:こちらは対数目盛ではない)「右肩上がり」にはなっていない。

  • 時間軸だけでなく空間的にも、全体でなく個別で見るとギザギザしている。
  • 株価を全体の平均ではなく、会社個別で見ると長期で見ても右肩上がりには必ずしもならない。(会社の業績が悪化したり業界が沈めば株価も落ちる。)
  • 物価や賃金も、国や地域別に見れば右肩上がりに必ずしもならない。(米国は上がっているが日本は横ばいなど。)

 

時間軸 - 短期/長期

  • ものを安く買って高く売ると、その差額が利益になる。
  • 株式の投資は、短期と長期に大別される。
  • 「グラフを拡大する(=短期で見る)とギザギザ」で、このギザギザの谷で買って山で売るのが短期の投資。
  • 「グラフを縮小する(=長期で見る)と右肩上がり」で、この左(過去)で買って右(未来)で売るのが長期の投資。

 

空間軸 - 個別/平均

  • 企業個別の株式(や債券)の売買に対して、市場全体(≒インデックス)に対する売買もある。
  • インデックス:株価指数。代表的な企業の株価を合算して、市場の動きを数値化したもの。「株価の平均値」みたいなイメージ。日本だと日経平均TOPIXアメリカだとダウ平均やNASDAQ、S&P500など。

 

投資のスタイル

  • 時間軸(短期/長期)と空間軸(個別/全体)で4象限できる。


  • ①短期+個別:「株で稼ぐ人」のイメージ。時間が日単位だとデイトレードになる。企業や業界、世界的な情勢などを具体的にチェックして生き馬の目を抜く営み。忙しいし勉強しないといけない。
  • ②長期+個別:成長が見込まれる企業、有望な割に評価(株価)が低い企業を探してきて、長い期間保有する。これも個別の企業調査が必要なので手間がかかる。
  • ③短期+全体:相場急落時に「平均株価の値動きの2倍で連動する金融商品」などを買うとかだろうか。
  • ④長期+全体:「時間・空間で平均すると右肩上がりになる」を利用して資産を増やすスタイル。

 

株のギャンブル性

  • 「投資をやる」と聞くと「ギャンブルだ」「素人がやってもカモにされる」といったイメージがある。
  • 「ギャンブル的である」=「誰かが損した分誰かが得する(ゼロサムゲーム)」のはグラフを近くで見た場合(短期)の①や③に該当する。
  • ④の「長期(時間的な平均)で世界市場の平均(空間的な平均)に対して投資」は、グラフが右肩上がりなのでゼロサムではなくプラスサムになる。
  • ④は「誰かの損で自分が得しよう」というより「みんなで得を薄く分け合う」となる。世界全体の成長に、自分の資産を多少貢献させて、その分け前をもらう。
  • ただし人間の人生が短すぎる(十分にグラフを遠くから見られない)ので、取り出すタイミングでたまたま低くなっている(世界的な大不況が起きるなど)と、損する場合もゼロじゃなく、リスクゼロではない。
  • 時空間を広く取るとリスクとリターンが下がり、狭くすると上がってギャンブル性が増す、という関係にある。

 

世界平均と連動させる意味

  • 逆に世界平均の成長率を基準にして見ると、運用しなかった資産は「目減りしていく」ことになる。
  • 緩やかなインフレで物価が上昇すれば、同じ額で変わらないままの資産は、相対的に価値が下がることになる。
  • 世界平均に連動するように運用するのは、「資産を増やす」というより「マイナスにならないようにしている」だけとも言える。

 

基本スタイル

  • 「大損したくない(大儲けも望まない)」「投資で自分の時間を費やしたくない」前提からすると、4象限のうち「④長期+全体」のスタイルになる。
  • ①②の個別株は、資産形成ではなく趣味と割り切ってやるのが良い。安全な範囲でギャンブルを楽しみたい、よほど好きな会社がある、株主優待が欲しい、など。

 

長期・積立・分散

  • よく「長期・積立・分散」が資産運用の3原則と言われる。3つとも「平滑化する」を意味する。
  • 長期→「グラフを遠くから眺めると右肩上がり」のこと。
  • 積立→「グラフを近くで見るとギザギザしている」ので、たまたま買ったタイミングが高いと損する。積立=「毎月買い続ける」なら「偶然高い/安いタイミング」が平均化される。
  • なお「積立」は逆に売る時も「たまたま安い時に売ると損」を平均化するために、「ちょっとずつ売る」が必要になる。
  • 分散→「日本は下がったがアメリカは上がった」とか「株価は下がったが債券は上がった」とかに対して、異なる種類のものを保有して平均化する。
  • 長期・積立は時間軸上での平均化、分散は空間軸上での平均化にあたる。

 

複利

  • 投資で上手くいくと、投資したお金×利率=運用益が手に入る。
  • 単利:運用益を取り出す。元金が変わらないので毎年同じ運用益になる。
  • 複利:運用益を元金に加えて次の投資に回す。元金が増えるので次の運用益はもっと大きくなる。これを繰り返すので雪だるま式に増える。
  • 金融商品の中で「毎月配当型」とうたうものがあるが、これは「運用益を取り出す」(もっと悪いと元金を取り崩す)に相当するので、複利の効果は得られない。
  • 「100万円を年利5%で10年間運用」だと、単利は150万円、複利は約163万円となり、複利の方が13万円多くなる。あるいは「年利5%でお金が2倍になるのにかかる期間」で言うと、単利は20年、複利は14年強。
  • 「長期で投資」は、この複利効果を得るということでもある。
  • 逆に払う立場で複利の恐ろしさを味わうのがクレジットカードのリボ払い。
  • 利息に対して利息がかかっていくため、元金に対して返済額がどんどん膨らむ。小額の定額でしか払わないため元金が減りづらい上、本人は気付きづらい。地獄の発明。
  • しかしキャッシングやリボ払いで損する人のおかげで、クレジットカードを会費タダで使えてポイントを貰えている。不公平な世界。フールプルーフではなくフールペナルティ的な仕組みになっている。

 

投資の種類

  • 預金:銀行や郵便局にお金を預けると利息がもらえる。ほぼゼロリスク・ゼロリターン(現在はゼロ金利)。
  • 債券:借金の証書(カタ)。国債なら日本国の借金の証書。期日になると元本+利息がもらえる。
  • 株式:企業の株を買うと、配当や株主優待がもらえる。購入時より売却時の方が高値なら利益が得られ、逆なら損する。
  • 不動産:大家になって家賃収入を得る。初期費用が高くハードルが高い。空室になった時の精神疲労が大きい。
  • リスクの大きさ(≒リターンの大きさ)はおおよそ、預金<債券<株式<不動産 の順。
  • 投資信託:「投信」「ファンド」とも呼ぶ。広くみんなから集めたお金をプロが株式・債券・不動産などに投資して運用→その利益の一部を貰える。
  • 株や債券、投資信託は証券会社や銀行を通じて売買できる。

 

投資信託

  • 初期費用が安い(100円~)一方、プロが運用してくれる分の手数料がかかる。
  • 株に会社ごとの「銘柄」があるように、投資信託にも色々な種類(銘柄)がある。
  • 投資信託の銘柄には、投資の対象(株式・債券・不動産など)、対象国(先進国・新興国など)、プロが関与する度合い(アクティブ・パッシブなど)の違いで色々な種類がある。
  • 銘柄の表には「債券/株式」「国内/海外」「パッシブ/アクティブ」などの分類が書かれている。
  • インデックスファンド:インデックスに連動するように組まれた投信。プロの関与が小さく手数料が安い。
  • 「④長期+全体」の中で「全体(市場全体に投資)」をやるにはインデックスファンドを利用するのが便利で手間がない。
  • インデックスファンドでも「パッシブ」は純粋にインデックス(指標)に連動するように運用されて手数料が安く、「アクティブ」は運用成績が上がるようにプロが手心を加えていて手数料がパッシブより高い。
  • ただしアクティブの方がパッシブより運用成績がいいとは限らない。プロでも「世界全体の平均」に勝てないことはよくある。

 

銀行と証券会社

  • 預金するには銀行口座が必要なように、株などに投資するには証券会社で証券口座を開く必要がある。
  • 証券会社には店舗があって対面でやり取りできる会社と、インターネット経由のみの会社がある。ネット証券は手数料が安く、営業時間に縛られない利点がある。
  • 銀行でも「投資信託口座」を開けば、投資信託だけ売買できる。

 

税金・枠組み

  • 投資で利益が出ると、税金を払わないといけない。
  • しかし大した金額でない個人は無課税にする(もしくは所得税を下げる)という制度がいくつかある。
  • 一般人の投資のハードルを下げてお金が市場に回るようにしたいとか、国が年金を十分払えないので国民に自力で用意してもらいたいとか、事務作業の簡略化などの理由。
  • そうした制度としてNISAや確定拠出年金がある。

 

NISA

  • NISA=少額投資非課税制度。売却益・配当が非課税になるが、投資枠には上限がある。
  • 証券会社や銀行で「NISA口座」の開設が必要。
  • 一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAといった種類があり、投資枠の大きさや対象期間などに違いがある。

 

確定拠出年金

  • 年金制度:3階建てで構成される。1階:国民年金(国民全員が入る)。2階:厚生年金(会社員や公務員が入る)
  • 3階部分には確定拠出年金、企業の確定給付型年金などがある。
  • 確定拠出年金:「Defined Contribution Plan」の略でDCとも呼ぶ。定期的に(毎月とか)お金を拠出し、本人が何に投資するか選んで運用する。
  • 企業型DC:企業が掛金を支払う。
  • 個人型DC(iDeCo):個人が掛金を支払う。
  • 60歳になる/障害者になる/死ぬと取り出せる。
  • 掛金は全額が所得控除の対象で、運用益も全額が非課税。
  • なので「毎月の掛金をどれくらい設定するか」は、「お金の自由度は減るが税金を減らせる」⇔「税金はそのままだが自由度も維持できる」のトレードオフになってくる。
  • 「企業型DCに入っている人はiDeCoに加入できない」という制限があったが、22年10月から併用可能になる。
  • この辺の制度は(NISAその他含め)年々追加されたりルールが変わったり、自分の状況変化(会社員じゃなくなったとか)時の手続きが複雑だったり、把握するのが本当に面倒くさい。こういうことに時間を費やしたくない。

 

保険

  • 保険には大別して「貯蓄型(積立型)」と「掛け捨て型」がある。
  • 貯蓄型は一種の金融資産。毎月積み立てて(病気や怪我せず)満期になるとお金が返ってくる。保険会社が運用する分多く戻ってくるが、手数料は当然引かれて利率は低い。自分で運用できるならあまり入る意味はない。
  • 保険は「自分が不幸になると勝つギャンブル」で、ギャンブルである以上は胴元(保険会社)が必ず得するようにできている。
  • 生命保険会社の商品は種類が豊富で、一見お得そうなものもあるが、加入者が「得する」ということは基本ない。
  • 自分の預金で不測の事態をカバーできるなら、保険はほどほどでいい。自分が死んで経済的に困る人(子供とか)がいなければ、死亡保障を手厚くする必要もない。
  • 保険会社の他に共済もある。こくみん共済(全労済)、県民共済など。保険会社と異なり非営利目的で掛け金がかなり安い。あと商品構成がシンプル(種類が少ないとも言える)。
  • ちなみに「人を怪我させたり人の物を壊して損害賠償を払う場合」に使える個人賠償責任保険は入った方がいいと思う。「自転車で高齢者と衝突・相手が植物状態になってしまい賠償金1億円」みたいな事例もあるし。こくみん共済だと+140円/月でつけられる。

 

ポートフォリオ

  • 自分の資産全体の中で、どの種類の金融資産をどのくらいの割合で持つか(円グラフ)の組み立てをポートフォリオと呼ぶ。
  • エアコンが急に壊れたり交通事故にあったり、まとまったお金をすぐ動かせないと困る場合がある。
  • その「いざという時に必要な金額」は「両親が現役で働いていて実家暮らし」とかなら少なくなるし、「家族全員を自分一人の収入で支えている」とかなら多くなる。
  • その「いざ」分は預金として確保し、残りの資産で運用を考えることになる。
  • とりあえず預金が100万円超えたら、リスクのある運用を少しずつ始めるくらいでいいのかも。

 

株と債券

  • 株価と債券価格には負の相関関係がある。一方が上がると、他方が下がる傾向がある。
  • 理由①:景気が悪いと株価は下がる。一方で景気悪化すると金融緩和政策が取られて金利が下がるので、発行済み債券の利率が相対的に高くなって買われて債券価格が上がる。
  • 理由②:株価が下がると運用益が減る→利回り固定の債券の方が魅力的になるので「株を売って債券を買う」動きが進み債券価格が上がる。
  • ポートフォリオを組む際に、株と債券を組み合わせると、株価が下がった場合のリスク回避になり得る。

 

年齢との兼ね合い

  • 若いうちは今後結婚するか、子供を持つか、早死するか、途中で退職するか、親の介護があるか等々、未来の不確定要素が多い。
  • 「若いうちにお金を遣う量」と「老後にお金を回す量」の振り分けの判断が若いうちは難しい。
  • 確定拠出年金は税金の面で得でも、60歳になるか障害を負うか死ぬかしないと取り出せないので、若いうちに額を増やす判断は難しいかもしれない。
  • ただどうせ掛金最大でも大した額ではないので、自由なお金(預金など)が一定額溜まったら、最大で入れてもいいかもしれない。
  • 老後の稼げない時期にリスクの高い投資で資産を減らすのは困るので、基本的に年を取るにつれてローリスクな資産の割合を増やしていくことになる。

 

個人的な状況

  • 「面倒くさいのは嫌だ」「世界市場と連動させる」という方針でやっている。
  • NISA(+特定口座)と企業型DCだけやっている。どちらもインデックスファンド(パッシブ)のみで、およそ日本株3割:海外株7割という比率。(日本が世界全体の3割もないけど。)
  • 数年前から国内・海外の債券インデックスファンドも少し入れている。年を取ってきたので。
  • 海外は株式・債券ともに為替ヘッジなしの商品を選んでいる。平均的にはそちらの方が有利かしらと思い。
  • NISAは約8年間で年利5%程度で+300万円くらい、企業型DCは約13年間で7.5%程度で+500万円くらい。元本に対しては倍くらいになっている。
  • 預金の割合は5割以上で(気付いたらそうなっていた)、もう少し投資の割合を増やしても良かったのかもしれない。
  • 保険は金融資産になるようなものは入っていない。就職前からずっとこくみん共済(全労済)で掛け捨てだけ。3000円/月。

 

  • 就職する前、20歳の時(2006年)に橘玲『臆病者のための株入門』が出版されたのを読んで、「長期・全体で見れば右肩上がりの世界全体とリンクさせる」という基本的な考え方を知ってなるほどと思った。今読んでも基本的なことは変わらないかと思う。それ以降は投資や資産運用の本は特に読んでいない。
  • 仮に運用成績が悪くても、「自分のやり方が悪くて損した」ではなく「世界がそうなっただけ」と思えるので精神衛生に良い。
  • 就職して6年後、NISAの制度がスタートした2014年から投信を始めた。
  • お金のかかる趣味はなく預金が溜まっていたので、そろそろ運用した方がいいのかもと思っていた時期に制度が始まったのでやってみた、という感じ。
  • 企業型DCは入社時点で導入されていたのでやっていた。最初は将来どうなるかも分からないので掛金を抑えていたが、徐々に増やして現在は最大にしている。
  • 頻繁に見るのは面倒なので、年に1回だけ棚卸しをしているが、大きな見直しはしていない。

 

個人的な価値観

  • 以下は職場の新人には言わないし投資/資産運用とは関係ないけど、書いていて思ったことのメモ。
  • 「お金のかかる趣味がなくて預金が溜まった」のは嘘ではないけど、それより「贅沢するのに罪悪感があった」の理由が大きかったかもしれない。
  • 学生の時に家計に余裕がなく、父親は新聞配達とガソリンスタンドの掛け持ちで、母親は回転すし屋のパートで、学費は全額免除だったけどギリギリの生活だった。(自分もバイト代を多少家には入れていた。)
  • それが就職して大手メーカーに入った途端、苦しみもなく十分過ぎるお金が貰えるようになって(なんだこれは?)と思った。
  • 親が質素に暮らしている中で自分自身にお金を遣うことに抵抗があった。
  • 両親も亡くなって数年が経って、そういう気持ちが多少薄らいだ。時間を潰すのにカフェに入るとか、短時間でもドリンクバーを頼めるとか、旅行に行ったり自宅を快適にするために家電を買ったりするのに、あまり躊躇せずに済むようになってきた。
  • 両親が共に60代前半で亡くなったのはそれぞれ相当なショックを受けたが、一方で介護の心配をせずに済んでほっとしている気持ちがあるのも事実だった。
  • あと「お金を消費して経済を回すべし」とはよく言われるが、あくまで産業資本主義の体系の中で考えるとそうなる、というだけの話で、より広い(外部の)系から見て必ずしも是ではない。
  • その辺りの感情については以前↓でもう少し詳しく書いた。

  映画『家族を想うとき』が冷静に見られなかった - やしお
 

  • 国内や海外の生活困窮者を支援している複数のNPO法人に毎年寄付している。これもその罪悪感と関連しているのかもしれない。
  • もっと寄付の額を増やすべきかと思いながら、老後の資金がどれくらい必要かも分からない、お金の心配を常にするような昔の生活に戻るのが怖いという気持ちもある。結局は自分本位だなと思うところはある。
  • 現時点では子供を持つ予定がなく、子育てにかかる費用はない。
  • しかしこの社会や自分の(とりわけ老後の)生活は、今の子供達・将来の現役世代に支えてもらうことになる以上、「自分の意思で子供を持った親達が自力で育てろ」と押し付けるのは筋が通らない。
  • 公的年金が積立てではなく現役世代によって支えられているのもその一例である。
  • 人間の再生産が一種の「社会インフラ」である以上、「子供を持つことは大金のかかる趣味」にならないよう、本来は国家が税の使途や控除を通じて調整すべき話だとは思うが、その調整が十分には見えない。(それが少子化の一因にもなっている。)
  • 子供を持たない私が「育児趣味論」で自己を正当化するのはフリーライドであって、また国家の調整が十分でないのなら、そのあたりをフォローするNPOへ寄付するなどした方がいいのではないか。
  • と書いていて思ったので、一人親家庭支援、子供食堂支援、子供の教育支援をしているNPO法人3つにそれぞれ寄付した。今後は従来の寄付先とあわせて続けていこうと思う。(実際にそうした活動をしている人達には頭が下がる思い。)
  • 認定NPO法人への寄付金は、所得税・住民税が控除されて半額近くが戻ってくる。これは「一部の税金の使途を、個人が自ら設定できる」ということになっている。

 

高卒新人に伝えるということ

 基本的には同僚に、業務外のことをあれこれ教え込もうとするのは(よほど本人が望んでいるのでなければ)「余計なお世話」なのでやらない。
 ただ高卒の新人を職場に受け入れるというのは、単に「業務をできるようになってもらう」だけではダメなのではないか。高等教育の代わりも一定程度果たして、いつか会社を辞めることになってもそれなりに大丈夫なようにするのは、一種の義務なんじゃないかと感じている。
 高卒の人は、高等教育を受ける4~6年間分を相対的に安い給料で働いてもらっている。もちろん高専~大学院の人はその間、学費を払って能力を向上させているので、入社時点での給料がその分高くないと成り立たないのはその通りでも、社内で一人が稼ぐ/貢献する金額差は給与格差ほど大きくないため、やっぱり高卒の人は「安い金額で働いてくれてる」ということになる。
 その会社に貢献してくれている分(差額)は、会社側が教育などの形で還元させなければ辻褄が合わないはずだという理解でいる。


 とりわけ老後資金の自力での準備は、公的年金制度の将来的な縮小/受給年齢の後ろ倒しが確実な中で、より必要性が高まってくる。(それでNISAだのiDeCoだの拡充されている。)今35歳の私より、18歳の高卒新人の方がより切実に必要な知識になってくるはずだ。
 プロでも何でもない自分が、しかも業務と直結しないことを同僚に「教える」のは、おこがましく恥ずかしいので嫌だけど、上記の認識から「本人が自分で勉強すればいい」で済ませるのもどうかと思って、整理して伝えることにした。