やしお

ふつうの会社員の日記です。

小島信夫『殉教・微笑』

https://bookmeter.com/reviews/102521784
何年か前に、旅行会社社員が遠足バスの手配を忘れ、しかし言い出せずに、生徒の自殺をほのめかすニセの手紙を学校に送って遠足を中止させようとしてあっさり発覚して全国ニュースになった出来事があった。小島信夫の小説の登場人物は、こうした人にちょっと似ている。ミスや弱さを言い出せずに取り繕ったり、強い謎のこだわりに本人が囚われたりして、事態がどんどん奇妙な方向に落ち込んで退っ引きならなくなっていく。外側からは「おかしな人間」に見えても、内的にはそうした人物に理屈があってどうしようもなく切実な世界を見せてくれる。