やしお

ふつうの会社員の日記です。

翁邦雄『日本銀行』

https://bookmeter.com/reviews/110423030
財務省悪玉論(財務官僚が政治家を増税に仕向けて日本の景気後退の原因になっている)は、財政規律を重視しない前提とセットでよく見かけるけど、そう単純じゃないはずだ、官僚が集団で馬鹿だと考えるのは不自然じゃないか、と常々思っていた。その点本書は反リフレ派の理屈がどうなっているのかよく理解できて納得性が高かった。単に中央銀行の役目を語るだけでなく、アベノミクスの政策的位置づけも語られる。結局は財政・金融政策は景気回復の邪魔をしないようにはできても、それ自体を生み出すものじゃない。


 党派性で片付けてしまえば「著者は反リフレ派だから」ということになってしまうけど、現実的にマネタリーベースの拡大のみによってデフレが解消したわけでもなく、結局のところ産業競争力が弱ければどうしようもない、という結論の方が、「減税さえすれば全部うまくいく」みたいな話よりも納得性が高い。実は思ったよりも(これだけ高い少子高齢化の人口動態を示している割には)日本経済は持ちこたえている、未来から見たら現在はむしろ減税状態になっている、というのはなるほどという感じ。