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ここで宇野弘蔵が提出した課題に40年後、真正面から回答したのが柄谷行人の『世界史の構造』にあたる。宇野はマルクスの資本論の適用限界を精確に見ようとしている。原理論としての資本論はあくまで資本主義社会のメカニズムを説明するものであって、商品経済を超えた経済生活一般までは説明できない。それでも、経済学を基礎構造として社会を見る方法が画期的だった。それに対して柄谷は、経済学のさらに下部に交換形態を据えることで資本主義の外側、経済生活一般まで(資本論を内包しつつ)拡大する方法を回答として示した、という関係にある。
本書は宇野弘蔵の講演や座談会などをまとめたものだけど、「この理論がどこまでの範囲を説明できるのか」をはっきりさせようとしている点で、科学者として本当に真摯だ。結構あちこちで現代経済学を批判していて、根本的に抽象化した原理論を作らないまま話なんてしたって、それって結局なんなの? 科学の名に値するの? みたいな話。
- 作者: 宇野弘蔵
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/06/08
- メディア: 文庫
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